セッション2
「電子商取引が切り開くネットワーク経済」
日本の課題3
| From: | 磯崎哲也 |
| Subj: | 【21】日本社会の問題点 |
【18】校條浩
磯崎さんのご意見は特にECに限ったことではなく、一般に新市場を形成する上でのベンチャーの役割とその阻害要因ということではありませんか?
その通りです。そして、
・ECにおいては、「その阻害要因」を取り除くことが他の事業にも増して重要
・その「阻害要因」である現状のファイナンスのしくみを日本でも革新するきっかけになるのが、やはり「EC」(のうちのオンライン証券取引等)
・ECの中でも、そうした金融関連のものは、他の産業に比べても真っ先に立ちあがる領域の一つ
・ECに広告費などで最も大きな「フロー」の収益を供給するのも、こうしたオンライン証券取引など金融関連のEC
ということを、申し上げております。
| From: | 磯崎 哲也 |
| Subj: | 【22】なぜ「EC」か |
【19】程近智
私もベンチャーに中小のベンチャーに期待したいのですが、日本での電子商取引の拡大を目指すには、当面は比較的潤沢な資金がある大企業のバックを持った企業内ベンチャーや地位と戻る場所があるアカデミアが最近企業と取り組んでいる産学協同プロジェクトなどに期待することに成るのでは。
「このままほっとけばどうなるか」ということでいけば、まったくその通りですと言わざるを得ません。ただ(少々熱く語らせていただくと)、そもそもなんで我々はここで電子商取引の話なんかをしているのか、ということですね。また、なんで日経さんが、MSのビル・ゲイツ会長まで呼ぶ世界情報通信サミットという大きなイベントで「電子商取引」というテーマを取り上げておられるのか、です。
それは、決して、「"通販ビジネス"が日本でも盛り上がるといいなあ」ということではないでしょうし、(それ自体、個々には決して悪いことと申しませんが)インターネットで「バイアグラ売ります!」「オリジナルTシャツ売ってます」みたいなやつがパラパラ増えるといいなあ、ということでもないでしょうし、「いやあ、うちの社長が "他社でもインターネットを使ったビジネスを考えてる、うちでも考えろ"ってなことを申しまして、私におハチが回ってきました次第でしてな。インターネットなんて今まで触ったこともなかったんですが、ま、これも何かの縁ということで、ははは・・」みたいな大企業のオジサンが、もっといっぱい増えるといいなあ、ということでもないと思います。
そうではなくて、やはり根本には、具体的に今のアメリカの電子ビジネスの隆盛のイメージが頭にあり、個人で小さく始めたビジネスがあっという間に大きくなり、大企業をも引き込み、社会全体の構造を変革していくダイナミズムに(意識するとせざるとに関わらず)惹かれ、魅せられているから、ではないでしょうか?
少なくとも私は、「日本は、いろいろ条件が厳しくていかんともしがたいですな」「政府になんとかしてもらわんと」「バイアグラ売りみたいのは今後どんどん出てきますよ。バイアグラ売りだって、りっぱな電子商取引でしょ?」「補助金が付いているEC関連の実験ってのは、ほとんど実用になるようなもんはないんですが、まあ雇用対策としては意味あるかも」みたいな話で終わるとしたら、「なんかちが〜う!」と叫ばざるを得ません。
「EC」で日本の社会の構造は変えられるし、その変革した日本の社会によってECも他の産業もさらに発展する、と思ってるんですが、私の考えは何かヘンでしょうか?
| From: | 種村 貴史 |
| Subj: | 【23】なぜ「EC」か |
【22】磯崎哲也
「EC」で日本の社会の構造は変えられるし、その変革した日本の社会によってECも他の産業もさらに発展する、と思ってるんですが、私の考えは何かヘンでしょうか?
上記部分以外の全ての面で、磯崎さんのポストは、まさに日本の現状、大企業の現状を的確にとらえていると思います。私もECは日本の社会構造を変える可能性があると信じています。しかし、ビジネスの現場にいると、なかなか突破口が開けません。このあたり、現場のトップにいらっしゃる山村さんにお聞きしたいところです。
【22】磯崎哲也
なんで日経さんが、MSのビル・ゲイツ会長まで呼ぶ世界情報通信サミットという大きなイベントで「電子商取引」というテーマを取り上げておられるのか
だからといって、このサミットの意義を説明しろと言われても困りますが(笑)。これは、関口さんにおまかせします。
| From: | 小野塚 仁 |
| Subj: | 【24】なぜ「EC」か |
私も磯崎さん【22】と同感です。「ベンチャー小僧」という表現がまかり通ること自体が、この国のどうようもない閉塞状況を表しているのではないでしょうか。
もし日本が、電子商取引に背中を向けて、既存のシステムだけでやっていこうとするのであれば、またそう出来るのであれば、何もECがどうのこうのと皆さんのお忙しい時間を割いて討論などすべきではないと思います。しかし残念ながら、太古の鎖国の時代には戻れませんし、さりとて我々の近隣の某社会主義国の様に孤立の危ない橋を渡る訳にも行かないでしょう。
私の理解が正しければ、日本は天然資源に乏しい故、技術・貿易立国を目指さざるを得ず、従いアメリカを始め諸外国で電子商取引が社会現象になっている今日、それを無視することは出来ないと思います。であればこそ、
【22】磯崎哲也
そうではなくて、やはり根本には、具体的に今のアメリカの電子ビジネスの隆盛のイメージが頭にあり、個人で小さく始めたビジネスがあっという間に大きくなり、大企業をも引き込み、社会全体の構造を変革していくダイナミズムに(意識するとせざるとに関わらず)惹かれ、魅せられているから、ではないでしょうか?
という磯崎さんのポイントがとても重要だと思える訳です。「日本株式会社」「護送船団」方式で高度成長からバブルまでを渡ってきた時期ならば、政府・大企業主導の“上からの指導によるEC導入”も良かったかもしれません。しかしそれでは、決して「ダイナミズム」は期待出来ませんし、高いコストをかけて既存システムとoverlayする価値はないと思います。いかがでしょうか?
| From: | 校條 浩 |
| Subj: | 【25】「証券市場」が鍵 |
磯崎さん、明確なご回答【21】をありがとうございました。概ねよく理解できましたが、ひとつ分からないことがあります。
【21】磯崎哲也
その「阻害要因」である現状のファイナンスのしくみを日本でも革新するきっかけになるのが、やはり「EC」(のうちのオンライン証券取引等)であり、
に関してですが、現状のファイナンスの仕組みの欠陥は、情報開示が不充分であり公明正大を欠く点と、投資家側の意識の低さ(例えば、リスクマネジメント)の両方であると感じております。この理由により、リスクマネーが循環しないのではないか、という仮説を持っております。ECの普及がテコになって状況開示等が進むとも言えないこともありませんが、順番としては逆ではないでしょうか?
いくらオンライン証券取引を整備しても、判断基準となる情報がないと投資家は動けません。未公開株の流通がオンラインになってもあまりうまくいってないのも、この理由かと思います。オンライン取引が普及するには、まずオープンで公平な(フェアな)IRや情報開示が必須だと思います。もう一方で、投資家の教育が重要かと思います。
| From: | 磯崎 哲也 |
| Subj: | 【26】「証券市場」が鍵〜B to B領域も重要 |
■要旨:
・ファイナンスの「制度」的改善だけでは問題は解決しない。
・より大きな問題は、誰がビジネスを実際にやるのか、そこで本当に望ましい「競争」が発生するか、だ。
・このためには、実際にビジネスをやる事業者をサポートする「B to B」のECが鍵になる。
・もうひとつ金融分野において重要な「B to B (to C)」は、「日本版401(k)」だ。数百万人〜数千万人に関わってくるため、日本の新しい「血流」を作り出すために非常に重要。
・ここは、現在、日本では非常に競争制限的な方向に進みつつあり、大問題。ここも、「EC」(オンライン証券取引)の技術を応用した革新的な切り口から新風が巻き起こる可能性がある。
■詳細:
【25】校條浩
現状のファイナンスの仕組みの欠陥は、情報開示が不充分であり公明正大を欠く点と、投資家側の意識の低さ(例えば、リスクマネジメント)の両方であると感じております。この理由により、リスクマネーが循環しないのではないか、という仮説を持っております。ECの普及がテコになって状況開示等が進むとも言えないこともありませんが、順番としては逆ではないでしょうか?
もちろんおっしゃる通りです。しかし、情報開示や投資家のレベルに問題があることは、識者の方々はもちろん、かなり大衆層にまで認識されるにいたっています。テレビの街頭インタビューなどで街のサラリーマンのオジサンあたりにインタビューしても、「いやー、日本はディスクロージャーが徹底してないからねえ」みたいなことは、すでにみなさんおっしゃいます。一方、制度面からこうした状況を改善するための提言は、それこそ、各種審議会等で専門家の方々が提言されてらっしゃいますし、国際会計基準導入など、改善策も徐々に導入されつつあります。
ですから私は、最大の問題点は、「じゃあ、それらの制度が改善された後に、誰がどうやって世の中変えてくれるの?」というのが、全然見えていないところじゃないかと思うんです。いくら「時価法の採用」「会計監査制度の強化」的なノリの部分が改善されても、実際に、一般投資家のところまでその情報を届け、投資のおもしろさを伝え、興味を持たせて、実際に取引をさせるのは、誰かが「ビジネス」としてやらなきゃいけないし、それはお役所等に頼る話ではないわけです。
ところが、日本には現在、金融における「ラストマイル線」に相当する証券会社が 300弱しかなく、今後、廃業・破綻が予想されるところも多々あるという状況です。昨年 12月に免許制が廃止されたのにも関わらず、今月になっても、新たな登録申請は8社程度しか上がってきていません。アメリカはブローカーは5千社以上存在します。これは、ひとつにはクリアリングファームという会社が発達していて、そこと契約するだけで月々1000ドル前後の固定費(!)で証券会社がはじめられるからです。(日本だと、まだ月数百万円から数千万円はかかります。)
このアメリカでの証券会社の月次固定費も、クリアリングファームとブローカーの間のやりとりにWeb技術を使っているところだとさらに安く、月 200ドルくらいで提供できる、とのことです。つまり、金融業における「B to B のEC」です。
個人投資家と直接やりとりをする B to Cのオンラインブローカーは、カネの流れを「血流」にたとえると、「毛細血管の静脈部分」に相当すると思います。新規参入業者一社あたり「10万人単位」で顧客の需要を掘り起こすことになると思いますし、何より最新のテクノロジーの勝負はここで展開されることになります。もうひとつ B to B的なもので、個人に関係してくるブッとい静脈が、「日本版401(k)−確定拠出型プラン」です。これは、100万顧客・1000万顧客単位の新規需要の掘り起こしをすることになるもので、本来、これが、銀行経由の血流に代わる、日本の第二のメインストリームになるべきところです。
ただ、現在の日本では、「401(k)のシステム構築には500億円から1000億円かかるらしい」というようなとんでもない話が、新聞・雑誌にまでまかり通っていますし、財閥系グループが共同で401(k)の新会社を設立するなど、始まる前から(いまだかつて聞いたことも無いような)非競争促進的な旧勢力による囲い込みが行われようとしています。これは、ネットワークインフラで言えば、いまさら「電話会社が大規模交換機を使ってネットワークを新たに構築」みたいなノリの話なのであって、ネットワーク領域でそんな構想が出てこようものなら、このフォーラム参加者の方々をはじめ各方面からボコボコにされるのは目に見えています。
ところが「循環器系(金融の領域)」だと、まだそういうことがまかり通っちゃうわけです。なぜかというと、ネットワーク分野では技術がわかる方が豊富にいらっしゃるのに対し、金融分野で技術が本当にわかっている人は極めて少数だし、その少数の方々はホントのことを発言できる立場にないことが多いためですね。この401(k)のシステム、実は、1000億円どころか 10億円もあればできちゃうんです。(!)この401(k)のレコードキーピングやWeb・コールセンターのインターフェイスなどは、オンライン証券取引のシステムがほとんど応用できてしまうわけです。
今まで大手金融機関だけで扱ってきた既存の年金業務という巨大な利権を守り、新規参入を防ぐために、意図的に「参入障壁が高い」、という風潮が作られつつあります。システムベンダーも、「安くできる」てなことを言っても損するだけなので、気づいていても誰も口にしません。
日本の今までの「心臓」(銀行等)の力が弱まっていて、日本の末端まで血が回らずにあちこち壊死しかかってきているので、第二の心臓(資本市場経由の流れ)を作り出そうというのに、はじめっから競争が起こらないのでは発展するものも発展しません。インターネットプロバイダの例を考えればよくおわかりになっていただけるかと思います。
確かに、今はシェアとしては、電話キャリア系、大手システムベンダー系などのシェアが高まっているかも知れません。が、インターネットの発展過程において、小さい業者が参入せずに、そうした大手数社だけではじめられていたら、ここまでみんながインターネットに興味を持つようになったでしょうか?ってことですね。日本の再生においては、神経系(ネットワークインフラ)の発達とともに、循環器系(金融インフラ)で血(資金)を通わせるということが、非常に重要になります。そこに必要なものは、やはり激烈な「競争」であり、情報通信テクノロジーであり、「EC」であると考えます。
| From: | 林 芳正 |
| Subj: | 【27】「証券市場」が鍵〜B to B領域も重要 |
【26】磯崎哲也
この401(k)のシステム、実は、1000億円どころか 10億円もあればできちゃうんです。(!)この401(k)のレコードキーピングやWeb・コールセンターのインターフェイスなどは、オンライン証券取引のシステムがほとんど応用できてしまうわけです。・・・
日本版401Kについてのお話、制度設計の末端にいるものとして、大変興味深く拝聴しました。制度設計の所では、対象商品の範囲、サービス提供者の範囲といった所が絡むのでしょうが、そこは、比較的自由な設計にするつもりですが、そういうふうにしておいても、デファクトで、独占的なものになってしまうという事でしょうか?”安くて良いもの”を持った新規参入者により、ブレークスルーが起こる・・というシナリオは、ないのでしょうか?アメリカの例などご存知の方教えて下さい。
| From: | 磯崎 哲也 |
| Subj: | 【28】「証券市場」が鍵〜B to B領域も重要 |
■要約
・401(k)サービスの寡占化に向けて働く力は、単純かつ古典的な「規模のメリット」であり、デファクトスタンダードなどによる「ネットワーク外部性」とは直接関係ないと想像される。
・ISP市場のアナロジーで考えればわかる通り、アンバンドリングを経ないバンドリングの動きは、市場の発展を阻害する可能性が大である。
・日本の金融ビッグバン・通信ビッグバンの個別の事象の順序と、アメリカのそれは異なるので、単純にアメリカでの金融サービスの発展順序と同じに日本も進むということにはならない。アメリカでは401(k)は「金融」の話だったが、日本では「EC」の話になる。
■詳細:
以下、ECとは直接関係ない金融固有の話も多いので、ご興味のない方には恐縮ですが、
【27】林芳正
日本版401Kについてのお話、制度設計の末端にいるものとして、大変興味深く拝聴しました。制度設計の所では、対象商品の範囲、サービス提供者の範囲といった所が絡むのでしょうが、そこは、比較的自由な設計にするつもりですが、そういうふうにしておいても、デファクトで、独占的なものになってしまうという事でしょうか?
「デファクト・スタンダードによる、ネットワーク外部性等が働いて」独占的なものになってしまうか?、ということだと思いますが、答えは「そうではない」ということになると思います。ご存知のように、確定拠出型プランは、従業員が一つの会社を退職したときに、次の会社に自分がいままで貯めた分を持っていける「ポータビリティ」が最大のウリの一つです。(つまり、今までの年金より格段に「オープン」なシステムです。)
つまり、転職の際などに、今までの資産の商品別やその他の内訳のデータ及び資産そのものを、プラン運営者間で受け渡しをする必要が出てきます。が、ここはいずれにせよ受け渡ししなければならないところなので、これが障壁とかデファクトスタンダードになって、寡占化が進む、ということはちょっと考えにくいです。企業(年金基金)や運用機関とのインターフェイスにおいても同じですね。
401(k)ビジネスに働くのは、「扱う量が多ければ、その分、バーゲニングパワーも出るし、一単位あたりの処理コストも下がる」という、もっと単純で古典的な「規模のメリット」であり、今の財閥系等の企業グループまで超えた日本版401(k)会社集約の動きというのは、ネットワーク外部性などは関係ない、単なる「既得権の囲い込み」からくるものと考えられます。
【27】林芳正
”安くて良いもの”を持った新規参入者により、ブレークスルーが起こる・・というシナリオは、ないのでしょうか?
もちろん、ありえます。ただし、はじめから「バンドリング」で話が始まってしまうと、いくら「"安くて良いもの"を持った新規参入者」といえども、参入するのが相当困難になってしまうでしょう。これは、インターネット・サービス・プロバイダ市場のアナロジーで考えていただくと、よくおわかりいただけるかと思います。日本でインターネットのサービスプロバイダが生まれたころには、既存の日本の情報通信企業は、ここまでインターネットが重要なインフラになるということを理解できなかった(または理解していても動くインセンティブがなかった)わけで、結果として、数千社にも及ぶISPが参入し、激烈な価格やサービス競争が巻き起こりました。
そうした競争を経て、現在、大手企業系によって大きなシェアが獲得されるとともに、業界全体の再編が進みつつあります。これが、はじめから大手企業が「インターネット市場は重要だ」「どうせ最終的には規模が大きいほど強い」ということで、既存の情報ベンダー系、電話会社系などが、合同で巨大なインターネットプロバイダを設立してしまったら、日本のインターネット市場は、ここまで盛り上がったでしょうか?申し訳ないですが、全く盛り上がらなかったと思います。
【27】林芳正
アメリカの例などご存知の方教えて下さい。
アメリカの場合、
・1950年代から CODAと呼ばれる確定拠出型退職給付プランがあった、
・これが高額所得者優遇になるというので、1970年代のはじめにこの優遇メリットは徐々に消滅
・1974年にERISA法制定、1975年には米国版証券ビッグバン「メーデー」
・1978年に内国歳入法[税法]に401(k)項追加、
・民間のコンサルタントが、この項目を使って現在のような401(k)確定拠出プランの原形を提案
・1980年代中盤までに、差別禁止テスト等の規定が内国歳入法に盛り込まれ、解釈が確定
・1980年代を通じ、さまざまな業者が市場に参入、
・1990年代に入って、大手業者に徐々に集約化が進みはじめる
・1990年代後半に入って、インターネットを使った「オンライン証券取引」という業態が登場
といった流れになっていると理解しています。つまり、アメリカはすでに24年前に証券ビッグバンを体験し、 1980年代から401(k)も増加して、ここまで「非常にゆっくり!?と」(しかしそれですらダイナミックに)いろんな業態が発展してきたわけです。これに対して、日本ではこれらのアメリカの数十年分と、情報通信革命が、どかーん!と一気に来るわけです。
私は、数ヶ月前から「日本ではオンライン証券取引のシステムは、401(k)と非常に関連が出てくる」とあちこちで言って回っているのですが、日本の関係者に話しても、アメリカの関係者に話しても「401(k)とオンライントレードは、まったくシステムが別だろ?」と、まずはピンと来ない顔をされます。そういう方たちに、「では、もしアメリカに1980年代から401(k)がなくて、来年からいきなり401(k)が登場するとしたら、その覇者(の少なくとも一部)は、オンライン証券取引の会社になると思わない?」と聞くと、「なるほど・・・そうかも知れない・・・・」ということになります。
アメリカのオンライン証券取引の会社も、それが現れた1990年代後半には、もう401(k)のマーケットのシェアはあらかた押さえられてしまっていたわけで、超後発組として401(k)関連のサービスに進出するしかなかったわけですが、来年からはじまるとなれば、こんなもんを放っておくわけはありません。システムについては、アメリカでの古参企業は、当然メインフレーム上の重たいシステムを開発し、それを現在まで改良改良で来ているでしょうし、コールセンターについても、重いPBXを使った1〜2世代前のものと推定されます。
日本で今からやるとしたら、もちろん重たいメインフレーム・ベースのシステムを使う必要もないですし、顧客とのインターフェイスも、Web重視のものがはじめから用いられ、金がかかるといわれるコールセンターも、重たいPBXを使わないCTI(Computer Telephony Integration)のソリューションで作り込めます。これらが、シンプルなデータベースを中核に、シームレスなインターフェイスとして実装されることになりますし、はじめからそうしたフレキシブルなシステムを想定して作ったシステムの方が、サービス競争に勝てる可能性は高いといえます。つまり、アメリカでは、401(k)は「金融」の話だったわけですが、日本では「EC」の話になるというわけですね。
| From: | 福富 忠和 |
| Subj: | 【29】「証券市場」は「競争促進」すべき |
【13】磯崎哲也
しかし問題は、今までの護送船団方式のおかげで、日本の金融界には、こうした「競争促進」といった観点から全体をグランドデザインできる方が、非常に少ない、ということです。
私も本業では(ここではNGO関係者として参加していますが)、金融に関わる仕事が多いのですが、そもそも金融業界には「マーケティング」と呼べるものが存在していませんよね。そこにオンラインマーケティングという複合的な要因が持ち込まれているので、なかな先は長い、という印象を持ってはいます。しかし、だからこそチャンスと考える中小証券会社など金融会社も多くなっているように思えます。
【13】磯崎哲也
確かに、個人投資家がオンラインで取引しやすくなることによって、株式の売買回数等は増えているかも知れませんし、投資に興味のある人も増えていると思いますが、一方で、投資信託のような「パッケージ」商品で、投資信託を運用する機関投資家を通じて間接的に株式市場に関連するものも多くなっています。今、手元に資料がないのですが、中期的なトレンドとしては、全体の投資元本では機関投資家の比率の方が高まっているんではないでしょうか。
しかし、投資信託の銀行窓口販売や、証券手数料の自由化など、通信系ビジネスに火を点ける要因はたくさんありますので、金融ビジネスの競争促進とECの点火要因としては、今がチャンスであるように思えます。たとえば、実際に投資信託をを窓口販売している銀行では、投信の利ザヤではこれまでの高い銀行員の給与では採算が合わないはずです。だからニーズとしては、投信のオンライン取引化、というものがまず出てきています。
またご指摘があったように、日本の投信の情報公開状況と非常にリスキーな投資実績を考えると、個人投資家も、すぐに証券取引に向かうようにも思えます。また、現状での為替リスクを考えると、海外株は個人には扱いきれませんから、オンラインの部分は、国内証券市場での個人投資家から火がつく可能性が見えてきます。
| From: | 小林 一 |
| Subj: | 【30】地方は食から |
小生の関連分野でまずはコメントさせていただきます。
<多品種中量生産へ>
ECが広がり、実物経済そのものに深くコミットし、そのありようを大きく変えつつある状況で(今更いうまでもないことですが)、このことは、一体、地方をよくするのかどうか考えつづけてきました。結論をいうと、ECは多品種中(小)量生産の道を開くものであり、そのことは、集中型・大量生産の現在の産業構造を大きく変え、地方での新たな生産(付加価値創造)活動を盛んにするのだと思います。
<コンビニを超えて>
消費者マーケティングの洗練度、情報通信システムを活用したクイックリスポンスという意味で日本のコンビニのレベルは大変なものですが、基本的には量産の生産品を細かくマーケティングされた個々のお客に正確に届けるものだと思います。インターネット・インフラに裏打ちされたECによって、生産者の方にも細かくマーケティングした、双方向の商売システムが可能となります。賢い消費者は、ふつうの消費者でも信頼できるマーケットを知っていれば、よりダイレクトな商品購入をするようになるでしょう。
食べ物の世界では、特にオーガニック食品を中心にそうした動きが起こっているようですし、地ビールが当初の予測をこえて伸びているのも製造技術のブレークスルー(発酵タンクの中規模ハイテク化)とともにインターネットでの情報流通の広がり(例えば本屋「まぐまぐ」の専門店「ちびちび」の「のむのむ通信」)が効いていると思います。必ずしも規模のメリットによらない本物を作れる人達にとっては今こそチャンスということでしょう。
すくなくとも、量産品に不可避の大規模の宣伝や、「マーケティング」や管理部門に要する管理経費等が不要(こちらはダイレクトマーケティングです)なだけ有利です。特に食産業については、マーケットアクセスがイーブンなら、原料生産が身近なだけ地方に比較優位があると思います。おいしいワインがEC調達できるようになれば、食生活だって豊かになります。
<60兆円の食マーケット>
食といって馬鹿にしてはいけません。食品販売と飲食業等をあわせたいわゆる最終消費段階での日本のマーケットは60兆円といわれています。そのうち、大ざっぱに間接費で半分の30兆円がECで直接的に影響を受ける部分と思われます。EC社会でも1日3度の飯を食うという人間(日本人)の習慣はあまり変わらないでしょう。地方にとって、それをいかに自分達のもとに取り込めるか、正念場です。
<ECインフラの整備の必要 ・・・・ ウルグアイラウンド対策費の大量投入>
もちろんそれに必要なインフラとしてのインターネットの使い勝手が東京や世界標準と同様の水準にってていることが前提です。また、商品輸送・ロジスティックスのシステムも十分に整備されることが必要です。この面でも規制緩和による競争原理の導入が必要だと思います。この点はインフラ部会で別に述べたいと思います。ウルグアイラウンド対策費を新しい食産業のバックボーンとなるEC普及、主にインフラとマーケット(ルール)整備に大量投入するのも手ですね。蛇足かもしれませんが。
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