世界情報通信サミット2001
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セッション・3
「政府と企業の役割を再考する」
「政府と企業の役割を再考する」をテーマに活発な議論を交わすパネリスト
教育現場でIT活用拡大

 「政府と企業の役割を再考する」と題したセッションでは、各国政府の情報化政策への取り組みやユビキタス情報社会の実現に向けた法整備について活発な議論が繰り広げられた。出席した国内外の経営トップや政府関係者は、教育現場でのネットワーク活用やデジタルデバイド(情報化が生む経済格差)の解消、ネット化による民主主義の実現など、さまざまな観点から意見を交換した。司会は関口和1日本経済新聞社編集委員。

  • 各国政府のIT化対策

    トーマス・カリル氏
     カリル 政府の役割は四つあると考えている。一つは民間企業が育つ環境をつくることだ。規制を緩和し、競争を活性化することが必要だ。二つめは、デジタルデバイドの解消。三つめは、様々なコンテンツ(情報の内容)の開発の推進、四つめは情報化社会でのリスクをヘッジするプライバシー保護やセキュリティーの問題だ。

     米国の国内総生産(GDP)は過去最高水準のペースで伸びている。マス・カスタム化やネット経由で個別に注文生産できるBTOの進展など、情報技術(IT)を起爆剤に経済は発展を続けてきた。

     今後は教育分野で、ネットワークなどの活用が増える。ブロードバンド(広帯域)化により、オンラインでの講義が実現する。双方向型のソフトがネット上で使えるようになれば学生の授業も一変する。生涯学習の場も増えるだろう。また音声認識などの技術が広まれば、障害者の生活水準の向上や、医療の質向上やコスト削減につながる。

     ゾベル 欧州委員会では、EUという共同体レベルで2010年をメドにIT化を進めている。特に重点を置いているのが規制緩和やブロードバンドへの投資、学校のオンライン化や生涯学習などのスキルの育成、インターネットの利用人口の増加だ。EUでは政府がイニシアチブを取れるよう、様々な方面から議論を進めている。

     電子商取引の実現に向けた法整備を進めている中で、消費者保護や雇用の確保などが課題となっている。また今後はプライバシー保護が重要になる。コンピューター犯罪を未然に防止できる対策を立てることが急務だ。

  • デジタル対応急務 ベ氏

    ベ・スンフン氏
     ベ 米調査会社によると、韓国の情報化の度合いは全世界で五位。私は98年末に情報担当相の仕事を辞めたが、予想以上の速度で情報化が進んでいる。

     韓国の携帯電話などのモバイル(携帯)は農村地帯などにも普及が進んでいる。インターネットでは今後、「ユビキタス」が重要になる。高速ネットワークを使った電子商取引の普及で、画像や音声を自由に配信でき、個人商店などの小規模店舗でも広く情報発信できる。

     政府の役割は独占体制を抑え、デジタルエコノミーへの対応を進めることだろう。民間企業が自由に参入できる体制を整えるべきだ。様々な摩擦を減らし、人々がネットを使える環境を整えることが必要だ。

  • 全学校をネットで パーソネッジ氏

    キース・パーソネッジ氏
     パーソネッジ カナダはすべての学校や都市をネットでつなぐ政策を進めている。デジタル署名などの暗号化技術にも積極的に取り組んでいる。巨大な貿易国でもあり、世界に向けて情報を発信していく。

     カナダは世界最大の光部品の生産国で、映画の特殊効果についてもカナダの企業が大半を占めるなど民間企業のIT化が進んでいる。2004年までにカナダ国内での高速ブロードバンドの敷設を目指しており、官民共同でIT化を推し進めていく。

     坂田 日本もe―ジャパン構想を発表した。昨年の臨時国会でIT基本法ができ、ようやく遅れを取り戻しつつある。日本は情報通信分野の自由化が早かったが、NTTによる回線の独占が長かった。この分野に競争を取り入れようと政府も動き出した。従来の規制を政府がいかに緩和し、市場原則に沿って進めるかが重要になる。

     携帯電話の利用は日本が進んでいるが、ブロードバンド化は遅れている。欧米では銅線を使ったADSL(非対称デジタル加入者線)の普及が進んでいる。日本はISDN(総合デジタル通信網)が中心で、ADSLの普及はこれからだ。セガやソニーに代表されるように日本のエンターテインメント分野は進んでいるが、教育でのネット利用が今後の課題だ。悪い状況からはい上がる意味では、日本の情報化は急速に進展するだろう。

     司会 ベ氏の話では市場原理と同時に「民主主義」が重要という。インターネット会議の中で「日本は市場経済に対する信頼がない」「民主主義が徹底していない」という意見が出た。ネット社会への目標を掲げる必要を皆言うが、政府主導か、民間でやるべきか。

  • 目標達成過程示せ カリル氏

     カリル 米国は過去に目標を設定してネット化を進めた時期があった。だが民間では、どんな技術がコストに対する効果が高いか意見の一致がない。どの程度正しいのか分からないから中立、というのが米国政府の立場だった。日本の掲げる高速・超高速インターネット網を4000万世帯に整備するという目標は希望なのか。どんな方法で目標を達成できるか過程を示す必要がある。

     司会 日本は米国に比べ欧州に近いといわれる。欧州では政府と民間の役割はどうなっているのか。

  • 政府は中立性保て ゾベル氏

    ロザリー・ゾベル氏
     ゾベル 欧州が米国より取り組みが遅いということはない。欧州の数カ国では米よりも携帯電話が普及しており、スカンディナビア地域は米よりインターネットの普及率が高い。カリル氏と同じ意見だが、目標設定をすると同時にその達成のメカニズムも重要。政府は中立性を保つべきだ。

     司会 韓国のケースは日本にとって興味深い。高速インターネットを400万世帯にも敷設するにあたり、負担を政府と企業がどう賄ったのか。

     ベ 資金の半分は海外からの直接投資だ。海外資本の流入が進んでおり、政府が海外の直接投資を進めている。残りの51%は民間資金で調達した。

     司会 日本テレコムは4月にボーダフォンからの出資を受け、出資比率の45%が外資という珍しい形態になる。日本はどのように変わっていくとみているか。5年後という目標は遅い気もするが、達成できなかったらだれが責任をとるのか。

  • 外資との提携有効 坂田氏

    坂田浩一氏
     坂田 今後、一番重要なのは新しいインターネットビジネスをどうやっていくかだ。1兆数千億円超の資金調達が必要となるため外資と提携する。また提携によって国際的に最先端の技術を使える。日本は周波数の関係もあり、設備投資額が英独に比べ2分の1から3分の1で済む。

     司会 各社は4000万世帯という目標に対し、具体的な計画を作っているのか。

     坂田 作っていない。光ファイバーで4000万世帯をつなぐのは無理だ。ブロードバンドはどこまで必要か。もっとも大都市は先に光ファイバーの整備が必要だろう。

     司会 教育分野の設備投資は他と少し違う。カナダは政府の比重が重い。

     パーソネッジ 政府が強力なリーダーシップの下に目標を示した。官民の協力が重要だ。

     司会 カリル氏は米国の情報政策の中心人物。当時の財政・貿易赤字の中で学校のインターネット化をどう進めたのか。

     カリル 大統領、副大統領の力があった。またリサーチも重要な役割を果たした。ボランティアの動きもあった。

     司会 米国の一部では「ネットデー」がある。保護者が学校に来てネット設備を整え、短期間で学校のネットが構築された。日本では通信が自由化されても皆やろうとしない。

     ベ 教育現場にパソコンをどれだけ導入するかではなく、どういう教育効果をあげるかが重要。ネット社会化は唯一韓国がアジアで1位になる可能性のある分野だ。

     カリル 通信の最高速度を上げるのがネット化の目標ではない。生活水準の向上が本来の目的。ネットはあくまでも手段だ。

     坂田 日本は活用の面がおろそかになる。IT教育を含め、少なくとも日本の小・中学校全クラスにパソコンを2005年度より前倒しして入れるなど政府が優先的に金を使うようにする必要がある。国の役割は過疎地、ヘルスケア部門、学校のネットワークを考えるというのが基本となるのではないか。

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    パネリスト
     ベ・スンフン 韓国科学技術院(KAIST)教授、元韓国情報通信相
     トーマス・カリル 前米技術・経済政策担当大統領副補佐官
     キース・パーソネッジ カナダ連邦産業省審議官
     ロザリー・ゾベル 欧州委員会 情報社会総局局長
     坂田浩一 日本テレコム 代表取締役会長
    司 会
     関口和一 日本経済新聞社産業部編集委員兼論説委員
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