世界情報通信サミット2001
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セッション・1
「ユビキタス+ブロードバンドで世界が変わる」
広帯域は第2の産業革命

「ユビキタス+ブロードバンドで世界が変わる」をテーマに討論するパネリスト
 世界情報通信サミットのセッション1では「ユビキタス+ブロードバンドで世界が変わる」と題し、だれもがいつでもネットを利用できる「ユビキタス」と大容量の情報を高速通信できる「ブロードバンド」が世界に与える影響について活発な議論が交わされた。ユビキタス+ブロードバンド世界は企業や消費者に一大革新をもたらす可能性がある半面、実現に向けては技術の標準化、コンテンツ(情報の内容)確保、産官連携など様々な課題があることが指摘された。司会は安田浩東京大学教授。

  • 高速ネット浸透への課題

     司会 セッション1ではまずブロードバンドとユビキタスのイメージを定義し、それがいつ実現するのか、どんなビジネスが今後成長するのかを考えてみたい。いつでもどこでも高速ネットに接続できる環境がユビキタスと言われるが、家庭やオフィスではまだそうした環境は整っていないようにみえる。

  • 社会や制度が重要 鈴木氏

    鈴木正誠氏
     鈴木 当社は情報を伝達する力を強化し、グローバルなIT(情報技術)企業になろうと努力している。今年は電話事業とデータ事業の比率がほぼ半々だったが、来年にはデータ事業が優勢になるだろう。ユビキタスの時代はすぐに実現できる。

     ユビキタスには一層のオープン化、有線と無線のシームレス化、セキュリティー確保、さらにコスト削減が求められる。NTTグループは通信料やオープン化で批判を受けてきたが、かなり改善された。重要なのは社会、制度、人的要素が絡むことだ。

     日本政府は「e―Japan(イー・ジャパン)」構想を掲げ、IT革命に取り組んでいる。構想は大いに評価するしインフラを早急に整備して実行することを期待している。ただ目標が2005年というのは悠長な感があり、自治体による技術者の確保も不十分だ。

     技術開発も課題だ。認証プラットホームの構築や著作権管理を進め、認証、決済、課金などを組み込んだシステムをつくることが重要になる。将来的には現在の十倍の情報量か、現在の10分の1の価格でサービスを進めたい。

  • 放送、通信など融合 サーク氏

    マイク・サーク氏
     サーク ブロードバンド(広帯域)は第二の産業革命だ。通信速度が速くなっただけでなくネット全体が変わろうとしている。

     過去の2.四半期には企業の株価が下がり合併や撤退など統廃合も進んだが、ブロードバンド通信の需要は確かに存在する。長期的なビジネスチャンスは大きく、株価に一時的な動揺が表れても不思議ではない。特に移動体通信の伸びは大きく、2005年には固定型を上回るとみている。

     IT企業は今よりもさらに高性能の製品、高品質のサービスを提供せねばならない。重要なのは標準化だ。企業の組織構造が縦割り型では新しいビジネスを展開できず、垂直統合型に変えることが望ましい。また放送、通信、広告など様々な業界が融合してコンソーシアムをつくれば、スピードアップにつながるはずだ。

     複数の異なる技術に対応し、変化に対応する柔軟な考え方を持つべきだ。業界がしっかりしたビジョンを持つことも必要。我々は今後5-10年でハードルを克服できると信じている。ネットの中枢が変わり、本当の意味でのユビキタス世界が実現するはずだ。

     ギャラガー 将来に対する我々の考え方は少し異なる。ユビキタスとはあらゆる所で均一であることだ。5年以内にそうした状況が実現するかとなると、そうはならないのではないか。抜本的に取り組まねばならない課題があるからだ。

     今後は三つの「C」が重要になる。一つ目はコマーシャル。この21世紀にはユビキタスを株主があまり評価してくれない。彼らへの説明が必要だ。無償という経済モデルは存在し得ない。

     二つ目はコラボレーション(協力)だ。「IPv6」(次世代のネット通信手順)もあらゆる分野の協力があれば必ず実現できる。基本は産官協力。欧州のように政府の財源が優先されるのでなく、企業と政府が国民の生活向上に向けて一体となることが必要だ。

     三つ目はコミュニティー。情報通信技術は高所得層だけのもの、先進国だけのものであってはならない。国や大陸を超えて提供できなければならず、コミュニティー全体の参加が望ましい。私は長期的にみればユビキタスを信じるし、努力もしているつもりだ。ただ、こうした問題がクリアされるには5年でなく10年かかるとみている。

    ローレンス・ノージーン氏
     ノージーン ユーザー、そしてコンテンツ会社の視点から考えを述べたい。米ナップスター(の無料音楽検索・交換サービス)を通じ、5000万の楽曲が世界で取り込まれた。全ユーザーのうち50%前後が米国以外と言われている。

     ブロードバンドネットに接続できる家庭も急激に増え、ケーブルテレビを上回る伸び率を見せている。だが実際にコンテンツを提供できているのは、このうちほんの一握りしかない。

     視聴者が求めるコンテンツが足りないことが何より問題だ。視聴者がほしがるコンテンツを提供できれば、必ず大きなビジネスになる。大恐慌の時期に映画と音楽が人気を集めたように、ユーザーは明らかに気晴らしを必要としている。ユーザーがコンテンツをほしいときに手に入れられ、それにコストを払うような環境を整える必要がある。

     司会 日本はユビキタス・ブロードバンド世界の実現という点については、遅れているのだろうか。

     鈴木 日本ではブロードバンドをいかに早く実現させるかという点に議論が集中している。だがビジネスとして成り立つかどうか若干の疑念がある。日本は欧米と異なり、まだユーザーがブロードバンドにいつでも接続できるようになっていないからだ。

     米国ではCATV(ケーブルテレビ)を使った回線やDSL(デジタル加入者線)の利用者が増えているが、普及のスピードは速くないという印象を受ける。日本で携帯電話向けのiモードが急速に普及した理由は大容量のブロードバンドというよりもユビキタスの示す使い勝手の良さだろう。利用者が使い勝手と情報力のどちらを重視するかとなると、当面使い勝手に軍配が上がるのではないか。

     ギャラガー 各国の市場にはそれぞれ独自の個性がある。欧米の中でもDSLを提供できる体制は整っていない。日本ではiモード革命が起きている。一方、英国では衛星を使ったデジタルテレビが40%近い世帯に浸透しており、この有効利用が盛んに議論されている。

     サーク 米国ではパソコンがかなり普及しているが、携帯電話の普及率は欧州に比べて低い。DSLも利用するまでに何カ月も待たされるといわれ、普及に手間取っている。各都市にはそれぞれの強みがあり、使い勝手もそれぞれ工夫する必要がある。

  • 光ファイバー、今後の普及は

     司会 光ファイバー普及構想や電波オークションの問題について意見をうかがいたい。またコンテンツの重要性をどう考えるか。

     鈴木 我々はこれまで光ファイバーの普及に努力してきたし、よいチャンスが訪れたとみている。技術も向上して光で効率よく情報を送れるようになった。これまでは光ファイバーを設置しても流すコンテンツがなかった。それが理由で設置を進められなかった。今は映像などコンテンツが充実してきた。コストも削減できており、競争力がついてきた。長所を生かして競争していきたい。

     サーク 光ファイバーが近い将来に新しい技術をもたらすことにはならないと考えている。通信速度の問題は銅線でもかなり改善されてきており、よほどの経済的な根拠がない限りファイバーの特徴は生かされないからだ。

  • 商業的根拠が必要 ギャラガー氏

    パット・ギャラガー氏
     ギャラガー 光ファイバーの設置についてはインセンティブを考える必要がある。商業的な根拠があれば構想は正当といえる。英国では「ブロードバンド・ブリテン」という構想が持ち上がったが、商業的根拠が欠如していた。

     政府が電波オークションを行った欧州では落札価格が高額になり、企業やユーザーに負担を与える結果となった。電波オークションは望ましくない。アプリケーションが使われなくなってしまうからだ。コンテンツを推進力ととらえるべきであり、努力の焦点を向け直す必要がある。その点では電波オークションを実施しなかった日本政府を支持している。

  • 広告業界が最有望 ノージーン氏

     ノージーン 携帯などの端末とコンテンツの融合が必要だ。放送、テレコム、広告などの業界がコンソーシアムを作れば素早い展開ができる。ブロードバンドは大きなビジネスチャンスを生む。最も大きな可能性があるのがマーケティングだ。広告主はユーザーとの間で一対一のマーケティングを行うことが可能になり市場が拡大する。

     ギャラガー 大きな市場が期待される次世代携帯電話では企業間のコラボレーションが進んでいる。早く安く開発でき、皆に得になる。

     IT業界にいる人間は自分たちの事業が成功すると確信している。しかしナスダックの株価は不調で、すでに3兆ドルを失ったといわれている。我々は自信をもって市場に説明し、信用を取り戻すことが必要だ。

  • セッション・1 セッション・2 セッション・3
    パネリスト
     パット・ギャラガー BT戦略・事業開発担当グループ・ディレクター
     ローレンス・ノージーン FMiTVネットワークス 会長兼CEO
     マイク・サーク エリクソン 上級副社長
     鈴木正誠 NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長
    司 会
     安田 浩 東京大学 教授
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    お問い合わせ:「世界情報通信サミット」事務局 gis@nikkei.co.jp
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