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| セッションで論議するパネリスト |
「信頼できる電子商取引のプラットフォーム」と題したセッションでは安全な電子商取引のために必要な安全対策や法的枠組みの制定について活発な議論が繰り広げられた。海外の有力企業のトップや関係者を招き、技術革新がもたらす効率性の向上、企業が負うべき責任や業界における自主規制などさまざまな観点から意見を交換した。司会は加藤幹之富士通ワシントン事務所長。
・プライバシーの保護
司会 日本では今まで3年間、個人情報を保護する政策を検討してきたが、まだ成立に至っていない。ほかの国でも一貫性がない。どういった分野で努力する必要があるのか。
ピアソン 「民間で努力/常に先手打つ」 セキュリティーを確保し、個人情報や消費者のプライバシーを保護するためには法的枠組みが必要だが、そのプロセスの大部分は民間部門でやらなければならない。もちろん官民の協力が必要なのは前提だが、ほとんどの情報、技術や基盤は企業の側にある。業界が、それもリーダー的企業が努力していかなくてはいけない。
マンディ 急速な進展がない理由は政府や立法側のペースが落ちたからだ。自主規制も強化されているし、自分で規制できるものに関しては政府の力を借りなくてもよいのではないか、と考える人が増えたからだろう。
米国の場合、議員たちは既存の業界を代表しているが、ネットで起きている問題がリアルでも起きていると告白しなければならないから動きが鈍くなったのではないか。プライバシーの問題はネットだけではなく実社会でも起き得るからだ。
コール 立法の過程はすっきりしていない。最初の一歩を間違えたら途中で方向を変えられないのは問題だ。自主規制は十分役に立っている。政府でなくとも規制は可能だ。政府は細かい案件ではなく、もっと広い意味での規制を考えるべきではないか。
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| ハリエット・ピアソン氏 |
ピアソン 競争力と成功には密接なかかわりがある。政府が管理するということは取り締まりと同義だ。情報産業に身を置くすべての人が政府の対応について考えなければならない。
司会 新技術の開発とプライバシー保護の関連についてどう思うか。
スクラボス 技術は正直な人がそうではない人から身を守るために役立つ。悪事を働く人は必ずいる。その手口を割り出して彼らに先んじなければならない。過去5年間ベリサインだけでも技術は前進しているが、ネット以外の世界でもこの問題について完ぺきな解決策はない。先手をうち続け、立ち止まってはいけない。
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| クレイグ・マンディ氏 |
マンディ 技術者にとって解決すべき課題は多岐にわたる。ネット上ではすべてが1か0で表現される。セキュリティーがあるかないか、プライバシーがあるかないか、など、あいまいさがない。無料で保護してもらえることを期待してはいけない。
・国際協調と日本
司会 消費者保護で国際協調は可能か
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| スティーブン・コール氏 |
コール 各国の法律は異なっているが、消費者から見ればそこには共通する部分がある。
マンディ 「行き過ぎは回避を」 国際的な調和はある意味で夢だ。何らかの違いは必ず出る。サービスの運用や提供で、アメリカとオーストラリアでは法的に対立する場合もある。法律の調和は可能だが、どの程度までやるのかを明白にしないと行き過ぎになってしまう。
スクラボス 重要なのは詐欺の問題だ。国境を超えた犯罪は日常茶飯事だ。偽造クレジットカード、偽造ドメイン名、他人になりすますこともある。自主規制では対処しきれない。
ピアソン 調和の概念は紛争処理とか部分的に国際的な合意を得るのは可能だが、文化的受け止め方の違いは認めないといけない。米と同じ基準を他国に当てはめられない。
司会 自主規制の国際協調は必要か。
ピアソン 自主規制に従わないアウトサイダー的企業が出てくる。そういうときに政府が法を執行すべきだ。
コール 細かい事は市場が決めてくれる。競争によって悪徳業者は市場から排除される。クーリングオフなどの制度を活用すれば、消費者は守れる。低価格商品の電子商取引における紛争でも、解決するための仕組みが必要だ。その際、技術が選別の役に立つ。どのように企業を説得していくのかは課題として残る。
司会 日本の政府や企業になにを期待すべきか。
マンディ 消費者の啓もうが必要だ。日本社会は他の国に比べ均質だったが、ネットは国境を越えていくものだ。そのための教育は必要だ。また、常時接続の急速な普及で新しいリスクにさらされている現実を自覚すべきだ。同時に社会に対してどんな義務を負っているのかを知るべきだ。セキュリティーの強化は官民協力と国際的な取り組みが必要だ。
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| ストラットン・スクラボス氏 |
コール 「日本の取り組み不足」 日本の政府のクーリングオフなどの制度への取り組みに感心しているが、企業の取り組みが足りないように思える。企業にあるノウハウや資源を利用して、政府と協調していかないといけない。積極的な参加が求められている。
スクラボス 日本でも他の国でもこの1年半の間に景気後退を経験した。その間、デジタル技術ではなく既存の手法で問題解決に向かったのが間違いだったのかもしれない。投資の効率を改善できるのはネットだ。テクノロジーをビジネスに使うための教育が日本でも必要だ。
ピアソン セキュリティーとプライバシーは経営者が取り上げるべき問題だ。もはや情報技術だけの問題ではない。経営責任にかかわる問題だ。ビジネス戦略に密接に結びついている問題でもある。
経営者の視点から日本の環境や世界の状況を理解してもらいたい。そして自社の政策を見て今後2―3年のビジネスモデルに合っているかどうかをチェックしてほしい。業界全体で全力を尽くさないと、1社が全体の評判を落としかねない。