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| セッションで論議するパネリスト。左からサイモン・パーネル、リー・ジェウン、富塚勇の各氏 |
セッション2では「コンテンツビジネス成立の条件」というテーマで、米TV Anytimeフォーラムのサイモン・パーネル会長、日本レコード協会の富塚勇会長、韓国ダウム・コミュニケーションズのリー・ジェウン社長を招いてパネルディスカッションを行った。司会は慶応義塾大学ビジネススクールの国領二郎教授。
・ネット上の規制
司会 インターネット上でのコンテンツビジネスは成立するのか。また、ネットの存在によって既存のビジネスが壊されているとの指摘があるが、そのためにもネットの上にも規制をかけるべきなのか。
リー ネット上のコンテンツビジネスは成立するかと言われれば、それは「イエス」だ。韓国では2年前には想像しなかったようなコンテンツの購入行動が起きている。私たちのサイトではネットラジオ局を開設しているが、これは有料ではない。何でも好きなものを聴けるけど、ダウンロードはできないというサービスだ。しかし、そこで気に入れば、ネットのショッピングモールにリンクしてCDなどを買うことができる。ネット上で販売されるCDの売り上げが50%伸びた。
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| 富塚勇氏 |
富塚 コピーはいとも簡単にできる技術になってきた。物的なモノを盗むのではなくてネット上で簡単にダウンロードできるから、あまり罪の意識がない状態で取り込んでしまう。私たちの調べでは韓国では市場に出ているものの28%くらいが海賊版。台湾では40%を超えている。今までの日本市場は海賊版がほとんどなくて世界から敬われてきたが、今はネットが出てきて私的海賊版がどんどん生まれている。これは音楽産業のみならず、音楽文化の衰退にもつながりかねない。
究極的には著作権者が録音された音楽のコピーの数をコントロールできるか数を把握できるまでの間は何らかの形で規制をかけるべきでないか。
リー コピー防止のために規制を多くすると、大きなビジネスチャンスを生むデジタルメディアを十分に成長させることができないというリスクもあるわけで、そう考えるとやはり寛容な態度を持つべきだろう。ビジネスが伸びるまでは少し見守ってやる。それから保護をかけても遅くないのではないか。
パーネル 「商機を失わない範囲で」 新しいテクノロジーが導入されれば利便性が提供される。だから業界は人々にとって使いやすい、使い勝手がいいというモノを適切なやり方で提供すべきだろう。一方で、人々に正直に行動してもらうような施策も必要だろう。正直者であるように教育していく。文化、そして法的規制も時には必要だろう。また、懲罰もあるかもしれない。でも、いずれにしてもビジネスチャンスを削らない、死なせないことが必要かと思う。
・具体的な姿どう描く
司会 これからブロードバンド(高速大容量)、無線、デジタル放送など多様なメディアが発展する中で、具体的なビジネスモデルをどう描くかについて話し合いたい。
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| サイモン・パーネル氏 |
パーネル 消費者には分かりやすいモデルが必要。モノやサービスには購入やレンタルなどの消費者に定着したモデルがあり、ここから逸脱すると「公正でない」と言われる。不正コピーは取り締まる必要があるが、それには消費者の心理や行動を理解しなければいけない。
リー 「手軽な支払方法必要」 コンテンツ事業で成功するカギは宣伝広告だ。韓国では1人が1日平均2.5時間インターネットにアクセスしており、若い世代に訴えるにはインターネットのバナー広告よりももっと効果的な広告システムの確立が必要だ。そのカギを握るのが質の高いコンテンツだ。
またインターネットでMP3ファイルを不正に入手することができないよう、1楽曲あたり1ドルとか50セントを手軽に支払う仕組みを構築しなくてはいけない。MP3はリスクではなく、むしろ知的財産権保護の解決策の糸口を提供してくれるのではないか。
司会 いまMP3がリスクではなく問題解決につながるというお話があったが、それが実現するかしないかというあたりが勝負の分かれ目のように感じる。
富塚 「音楽の複製すべて捕捉」 インターネットを通じてビジネスとして成立するための大前提は、どのような形であれ、一つの音楽の複製物がいくらつくられるかを全部捕捉することだ。無数に交信されている音楽を把握する方法は一つ。インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)に誰の何という曲を誰がダウンロードした、あるいはアクセスしたかを全部、記録してもらい、コンテンツ所有者に報告してもらう。そうしてサービスプロバイダーが毎月、会員に対して、あなたは今月は100曲聴いたので1000円です、と毎月の利用料と一緒に請求して代金の回収を代行してもらえばいい。
司会 非常に具体的なモデルを提起していただいたのを受けて、ブロードバンド、テレビも含め新しいメディアが出てくる中でどういうビジネスモデルを考えていけるのかを、提供者側の論理と離れて、ユーザー側の論理から考えてみたい。
パーネル コンテンツを簡単に妥当な価格で簡単に入手するのは誰もが望むことだ。妥当な価格であることは重要なポイント。さらにパーソナル化が大事だと思う。いろいろなものをパッケージ化して、一定の時間を楽しんでもらう。例えば今日の夜はこれを楽しもうというパーソナル化が、ビジネスモデルの構築の鍵になる。
テレビ業界は様々なコンテンツをチャンネルとしてパッケージ化して提供している。パーソナル化された新しいコンテンツを家庭に届けるには、コンテンツをユーザーが選んだ記憶媒体に入れてサービスするようなモデルが重要になる。
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| リー・ジェウン氏 |
司会 先ほど富塚さんは「ブロードバンド上の音楽コンテンツのビジネスモデルは、よほどドラスティックな枠組みをつくらない限り成立しないのではないか」と発言されたが、リーさんはどう考えるか。
リー たしかに音楽で妥当なビジネスモデルをつくるのは難しい。しかし富塚さんがおっしゃったやり方はかなり極端な例だと思う。すべてを記録して、有料化するといってもデジタルテレビや録音できるDVDが出てくると、問題はもっと深刻になる。