中国では情報技術(IT)産業の成長が確実に進んでいる。確かに中国のIT産業は日本や米国と比較すれば10―15年遅れているとされるが、WTO(世界貿易機関)加盟を契機にさらなる成長の機会を迎えることになるだろう。
中国でのソフト分野をみると、市場規模は8年間にわたり年率28.3%、サービス分野で6%の伸びを示している。IT市場規模自体は大きくはないが、今後は国内市場を中心に大きく成長するだろう。
この成長をうけ中国では全体でIT分野への取り組みが加速している。ソフト分野では規模は小さいながらも企業数が増え、今では1万以上の企業が活動するようになった。その各企業はIT産業の成長を見越して北京や上海、遼寧など有名大学が存在する地域に会社を構え、ソフト技術者など優秀な人材の確保を狙っている。
政府も人材育成には積極的だ。インターネット上で技術者を教育するネットワーク大学の設立やソフト分野の専門大学の増強などの構想を温めている。大学などの教育現場でもこれまでは研究者育成など学術的研究が重視されていたが、IT分野の成長にともない即戦力となる技術者の育成により力を入れ始めている。大学からは5年後には現在の5―10倍の技術者が育ち、現場で活躍するようになるだろう。
これらの動きを一段と加速させるのがWTOへの加盟だ。かつては国家主導の計画経済のもと企業間の競争はなかった。だがWTO加盟で規制緩和が本格化すれば、企業間の競争が激化する。
各企業は外資や国内企業との競争で生き抜くためにERP(統合基幹業務システム)などのソフト開発や、コールセンターなどの設備増強、通信網などインフラの整備の必要性が増え、これらの分野への投資額が増えるからだ。
成長を見込める分野のひとつは携帯電話などの電気通信分野だ。携帯電話はサービス開始から5年で1億4000万人が利用するまでに成長。13億人以上の人口を抱えているだけに、今後の需要も期待される。携帯電話でインターネットに接続し、画像などを楽しむ新たなサービスも始まった。
ノキアなど外資は既に携帯電話の製造工場を中国に設けているが、今後は海外の通信事業者も参入するだろう。通信事業者間で消費者へのサービス競争が激しくなれば、携帯電話に搭載するソフトの開発も進み、国内のソフト開発会社に成長のチャンスが訪れる。
運輸業界では政府が大都市間をつなぐ幹線道路整備を計画しているという。この幹線道路にはITS(高度道路交通システム)導入が予定されており、実現すればソフト会社やシステム会社の成長が期待できる。電力業界でも1社しかない電力会社の解体が計画されている。
計画が実現すれば各社はコスト削減のために効率的な送電設備を制御するソフトが必要になる。政府自身も紙の書類を使わない電子政府を進めている。これらの動きはいずれもIT産業への追い風となる。
確かに中国は資本主義諸国とは法制度などが異なる上に、設備も未整備で、投資にはリスクが伴う。だがチャンスをつかむにはリスクが必要になる。