現在の電気通信産業は日米欧どこを見ても経営不振に苦しんでいる。しかし、ひとたび将来に視点を移せば決して悲観する必要がないことがわかる。それは通信分野で過去数年に起こった歴史を振り返れば明らかだ。
この数年間に極めてユニークな三つの出来事が同時に起きた。通信産業を取り巻く環境はこれによって激変し、通信各社の収益は悪化の一途をたどっている。
だが心配する必要はない。これらのユニークな出来事はいずれも2度と起こることはないからだ。
三つの出来事の一つめは、主要国で進んだ通信市場の開放・自由化だ。米国では1997年に競争的市内通信事業者の本格参入が始まり、欧州では98年に音声通信が自由化された。日本市場もここ2、3年で完全な競争状態に入っている。
通信自由化は巨大なダムが崩壊したような衝撃を業界に与えた。だれもがゼロから通信サービスを始められるようになり、銀行などさまざまなプレーヤーが業界にとび込んできた。
新規参入組は既存の通信事業者からシェアを簡単に奪えると信じ、こうした企業に投資家の資金が流れ込んだ。光ファイバーの敷設計画を発表するだけで株価が暴騰するといった異常事態が発生した。金融工学の発達により巨大な過剰投資が固定網に向けて行われたのだ。これが二番目の出来事だった。
しかし2000年前半にブームははじけた。砂上の楼閣は崩れるのもはやい。
通信各社の時価総額は劇的に減少した。通信料金やマージンの下落は体力のない企業に市場からの退出を迫る。今年1月には米グローバル・クロッシングが経営破たんするなど、規模の大小を問わず通信各社は悲惨な状態に陥った。機器メーカーにも累が及んだ。
三つめの出来事は、通信各社が投資を控え、銀行が貸し渋りの姿勢を強めるなかで発生した第三世代携帯電話の電波オークションによるライセンス料の暴騰だ。欧州では過去1年間で、通信事業者が1100億ドルのライセンス料を負担した計算になる。
通信各社は10―20年先のライセンス料を前倒しで払わなければならず、債務返済コストが上昇し投資計画の修正を迫られた。このため機器メーカーは再び苦境に陥り株式公開市場は2001年初めにこう着状態となった。
ほぼ同時に重なった三つの出来事が、現在の通信不況を招いた。このような状況は2度と起こらないと、断言できる。通信産業に成長の余地がなくなったと悲観する必要はない。
もちろん通信料金は今後も下がるだろう。これによりユーザーである消費者の使い勝手や企業の生産性は向上する。通信事業者はグローバルな各種のサービスを提供できるよう体質を強化しなければならない。ネットワークの構造で言えば旧来の交換機は必要なくなるだろう。
BTはこれまでも人員体制や指揮系統の見直し、ブロードバンド対応など将来を見越した手を徐々に打ってきた。通信料金のさらなる下落は確実なため、BTは回線サービスという下位の階層だけでなくコンテンツ(情報の内容)などの上位階層のサービス分野も他社と手を組みながら強化している。
信頼性が高く柔軟なアクセスサービスがBtoBやBtoCの成長のカギを握っており、それにはセキュリティーの問題が欠かせない。