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問われるコンテンツ・日米の情報化投資に格差
情報化をめぐって世界は急激に変化している。インターネットは爆発的に拡大しており、世界の通信業者の合従連衡も活発だ。
企業の連携密接
ただ、日米両国の情報化投資には大きな差がある。米国では、名目設備投資に占める情報化投資の割合は85年までは約15%だったが、96年には32%、98年には40%に上昇するという。日本も比率は上がっているが去年は16%。急激な変化の中で、日本は大きなハンディキャップを背負っている点を指摘しておきたい。
拡大するインターネットを通じて、企業間の連携は従来より密接になっている。情報インフラの整備をベースに、質の高い相手と協力的に仕事をするバーチャルな企業集団ができあがる。これがインターネット時代の企業活動におけるポイントの1つだ。
こうしたインターネット時代を支えているのがマルチメディアであり、その応用範囲は極めて広い。個人の知的能力を拡大し、企業の業務プロセスを効率化する。新しい社会機構を構築してライフスタイルの革新を支援する。金融や製造、流通サービスなど、あらゆるところに市場がある。
その際、一番の問題になるのはコンテンツ(情報の内容)の質だろう。心を打つ映画なら大勢が見るだろう。だが、そもそも映画がつまらなければ、いくらビデオ・オン・デマンドなどマルチメディア技術が確立しても、宝の持ち腐れになってしまう。
各国の政策をインフラ整備の点から見ると、米国がNII(国家情報基盤)構想やGII(世界情報基盤)構想を発表し、欧州連合(EU)は情報社会に向けた行動計画を作った。
日本も高度情報化推進本部を設置している。マレーシアでもマハティール首相を中心に「マルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)」計画が進行中だ。インフラ利用の視点からも、それぞれが計画を打ち出している。
日・EU産業人ラウンドテーブルや日米財界人会議などの場で、情報通信インフラの整備や利用について話をしていきたい。できるだけ早く1つの方向へ向くことが望ましく、民間も努力をしていきたい。
発展を続ける情報社会だが、21世紀に向けては、セキュリティー、知的所有権、言語、通貨という4つの課題がある。
セキュリティーを解決する基本技術は暗号だ。電子署名、認証、証明書、認証局の問題もある。この分野では、富士通、日立製作所、NECなどが出資した共同認証会社が97年10月にサービスを開始している。セキュリティーを確保し、電子商取引(EC)を実現する重要な機能の1つとして推進している。
知的所有権問題では、著作者の立場を尊重すべきなのは言うまでもない。しかし、尊重の仕方が厳しすぎると、それだけ利用が制限され使いにくくなってしまう。要は、このバランスをどうとるかである。
文化主導型で
言語の問題もある。インターネットが拡大し、ボーダーレスが進むのは望ましいし、そこで英語が使われるのも歴史的に当然かもしれない。しかし、英語圏と非英語圏の格差をどう克服するかという問題は残る。インターネット拡大の背景には多様な文化があるという矛盾を、どう解決するかという問題だ。
これまで技術は文明主導型であり、効率追求型だった。今日の我々があるのは、この技術があればこそであり、今後も効率を追求する必要があると思う。
しかし、それだけではだめだ。独自文化の創造を支援する文化主導型の技術が一層求められよう。新しい技術によって、言語の課題も徐々に解決されるだろう。
最後は、現実通貨とバーチャル通貨の問題だ。
知恵出し合う
国際金融システムは不安定であり、為替相場は乱高下する。そのときに、国境を超えたECは可能なのか。何も固定相場制度に変えろというわけではないが、緩やかな変動相場制を何らかの形で実現しない限り、国境を超えたECはナンセンスだろう。
政官財のトライアングルの中で発展してきた日本だが、時代は変化している。もっと自由にという時代だ。しかし、関係者が力を合わせるのは悪いことではない。労働界、学会、報道界を加えた新しい六角形を形成し、その中で、お互いに力を合わせて知恵を出し合うべきだろう。
事実を正確にとらえて、それぞれの立場で意見を交わし合うのが重要だ。だが、相手をたたきつぶすような批判では何にもならない。六角形の中の相互批判の中から、21世紀の日本の姿を描いていきたい。
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