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ネット社会分科会

キーノートスピーチ
 ◆「ジョン・ゲイジ氏 サン・マイクロシステムズ社 サイエンスオフィス・ディレクター」

パネルディスカッション
 ◆「ネチズンの登場と新しい民主主義社会――ネットワーク社会問題解決への世界協調」

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ジョン・ゲイジ氏
サン・マイクロシステムズ社 サイエンスオフィス・ディレクター
法制度との摩擦も・文化圏の違いを埋める

 「世界情報通信サミット」のネット社会分科会で、米サン・マイクロシステムズのサイエンスオフィス・ディレクター、ジョン・ゲイジ氏は、インターネットの効用を説く一方で、サイバー(電脳)社会における人々のプライバシーの権利と政府の諸活動との間に生じる問題などについて基調講演した。講演の要旨は以下の通り。

 通信コストが下がり、だれもがインターネットに接続しやすくなれば、文化圏の違いなど地域社会間の様々な溝を埋めてくれる。貧しい者と富める者との格差も減らせるだろう。

 インターネットが新たなコミュニティーを生み出している。もし日本において無制限のインターネット接続が月2000円程度の固定料金で可能になれば、新コミュニティーの構成者の数は大幅に増加し、爆発的な商取引が発生する。米国のビジネス界ではネットを介した情報交換が全体の3分の1を占めている。

 情報の流通速度の飛躍的な増大は多くのことを実現した。例えば10年前ならごく限られた人だけの情報だった人工衛星で撮影した画像を、いまでは子供でもネットから入手できる。また、テレビ局が戦闘中の軍隊の作戦行動の映像を衛星から入手すれば、すぐにネットで流すことも可能だ。

 ただ、他の先端技術と同様にインターネットの新技術は市民の権利に関する課題を突きつけている。プライバシー保護や言論の自由の問題だ。

 携帯電話は常に持ち主の居所を確定するために個人情報を発信し続けている。電話をかけた場所や話し相手など法の執行者にとっては格好の情報がデータベースに蓄積される。いたるところに設置された監視カメラは人々の姿を了解なしに録画し続けている。

 サイバー社会では言論の自由の定義が広がっており、既存の法制度や政府の活動との間で摩擦が生じる可能性がある。国家間で自由に金銭を移動させることも、新たに言論の自由の概念に含まれるようになったものの一例といえる。

 もし、資本取引などのネット上の活動に課税するならば、この金銭の動きを当局が常に監視・把握する必要が生じる。また、どこのだれにアクセスしたかがわかるネットを介するインターネット電話・ファクスなどの情報が監視される危険性もある。

 新たな権利と従来の法制度や政府活動との摩擦をいかに解決するのか。サイバー社会の到来で、言論の自由に対する乗り越えねばならない新たな課題が持ち上がっている。

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「ネチズンの登場と新しい民主主義社会
     ――ネットワーク社会問題解決への世界協調」

 
<パネリスト>
ジョン・ゲイジ
サン・マイクロシステムズ社 サイエンスオフィスディレクター
デビッド・ファーバー
ペンシルバニア大学教授
公文俊平
国際大学教授
佐々木かをり
ユニカルインターナショナル代表取締役社長
(司会)國領二郎
慶應義塾大学大学院助教授

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政府規制のあり方課題

 ネット社会分科会では「ネチズンの登場と新しい民主主義社会」をテーマに、人々の権利の視点から見たサイバー(電脳)社会の特徴や、新技術が拡大させたネット上での言論の自由とプライバシーのかかわりなどについて意見を交換した。(敬称略)

 ゲイジ サイバー社会での個人とは何か。そこでの言論の自由とは何か。

 公文 いかなる新技術も人の自由を拡大する半面、自由を奪うという性質を持つ。例えば原子爆弾は人を死の危険にさらす一方で膨大なエネルギー源を我々に与えた。どちらか一方向に単線的に進むと考えるべきではない。

 佐々木 技術進歩で日常生活の多くのことが丸裸にされることが避けられないならば、その状況を受け入れるよう自らを教育する必要があるのではないか。

 ファーバー 電子メールのようなネット上の活動では個人と公の世界の区別があいまい。政府を信用していない米国人の私からすればいかにプライバシーを守るかが重要な課題だ。

 国領 サイバー社会は伝統的な社会と異なるのか。その特徴は何か。

 ゲイジ インターネット社会は人と技術が画面を介して接する。その中でいかに信頼関係を築くかが課題だ。

 ファーバー 他人への信頼を基礎にしたコミュニティーであることは現実世界と同じ。参加者が増えるに従って良い人も悪い人も増え、従来社会と変わらない状態になるだろう。

 公文 現実社会との違いは大きくない。サイバー社会で、一時的にプライバシーなどが危機に瀕(ひん)することがあっても、次第にバランスがとれていくはずだ。

 佐々木 サイバースペースと現実世界は、基本的に同じだろう。インターネットは写真も音声も送れるが、まだ文字が主体。アウトプットが文字であるという点が現実世界とは違う。

 国領 ネット社会は個人ベースで、自己実現する社会。しかし日本人は今まで自己表現をする経験がなかった。個人が責任ある行動をするのには慣れていない。

 佐々木 私は楽観している。インターネットは始まったばかりでこれから発展する段階。恥ずかしがったり、びくびくする必要はない。

 公文 集団志向から個人志向型の文化へ変えていくのは不可能ではないが、何を社会的な価値とすべきなのかを考えなければならない。

 国領 会場から「ネットワークは今のところ、持つ者と持たざる者の差を広げているのでは」という質問が届いている。

 ファーバー 持つ者と持たざる者というのは以前から存在する問題だ。飢餓や貧困は現実問題として存在する。米国では公立図書館が多くの文化を醸成してきた。ニューヨーク市の移民はまず公立図書館へ行って、いろいろなものを読み社会に参加していった。同じことはインターネットでも可能ではないか。

 公文 テクノロジーは有益だ。障害を持つ人たちの手助けもできる。確かに持つ者と持たざる者の格差はあるが、社会や技術の変革が広がれば縮小していくだろう。

 ゲイジ 私も楽観的だ。米国で学校をインターネットで結ぶ「ネット・デー」というプロジェクトを進めている。企業から技術者を募り、自分の子供の学校へ行って配線してもらうボランティア活動だ。米国では4年以内に現在の教師の半分が定年を迎え新しい教師に代わる。ここで大きな変化が起こるだろう。

 公文 文部省が国家政策としてすべての学校をインターネットに接続すると言っている。日本で何も起きていないわけではない。

 ゲイジ 学校のパソコンをインターネットに接続した親は帰宅後、次の展開を考え始めている。日本は文部省がやってくれるから座って待っていればいい、と考えたのでは困る。

 ファーバー 学校でネット接続したパソコンを特別な部屋にしまい込み「使いたい学生は申請書を提出せよ」では利用者はいなくなる。

 佐々木 インターネットを教育に使うには教師がクリエーティブでなければならない。シンガポールのラッフルズ・ガールズスクールでは教師がホームページを作り、ホームページから専門家のアドレスに結びつく。子供は専門家との対話で第2、第3のページを作っている。

 国領 サイバースペースでの政府と警察、司法の役割という話があったが。

 ファーバー インターネットは国際社会だ。国境を超えていろいろなものが集まる。(暗号を解読する)カギを委託するという方法は現実的だろう。もちろん不正使用される恐れはあるため、取り扱う政府高官が絶対の責任を持つのかが問題だ。

 公文 集中管理する主体は国家レベルなのか、もっとグローバルなレベルなのか、それらが実現可能なのかを検討すべきだ。私自身は現在の政府の役割は、もう少し縮小すべきだと思う。

 ゲイジ 膨大な資金がグローバルに移動している。麻薬取引では5000億ドルが規制の緩いオフショアで匿名口座から動かされている。G7(先進7カ国)やOECD(経済協力開発機構)は国際的な銀行業務への規制を真剣に検討せざるを得ないだろう。

 国領 会場から「インターネット上での市民のNGO(非政府組織)活動をどう評価するか」という質問が出ている。

 ゲイジ NGOはインターネットの構築と発展に貴重な役割を果たす。政府より速やかに動き、一国の政府にはできない国際性がある。

 公文 国民を考える政府も圧政的な政府もある。社会的責任感のある企業もない企業もある。NGOも同じだ。どれか1つに頼らずに、いろいろなシステムを組み合わせる必要がある。

 インターネットは生命力を持ったシステムだ。だれかが制御しないと壊れてしまう機械ではない。自発的なセルフ・ガバナンス・システムを持って当然だ。ただ人間の傲慢(ごうまん)と言われるかもしれないが、生命はどんな場合も人間に有用とは限らない。犯罪の少ないインターネットの仕組みを考えるために、政府が力を貸すという米政府の見解は一つの理屈だろう。

 佐々木 国際社会の中でルールや組織作りをしている間にもインターネット上で犯罪や名誉棄損が起きている。市民運動や小さなグループ活動など、参加者の顔が見えるネットワークなら同意されたルールが作れるはずだ。

 国領 最後に言い残したことがあればどうぞ。

 ゲイジ ファーバー氏が紹介したマンガの話は真理を突いている。犬がコンピューターの前に座ってキーボードをたたいている。その犬が「僕が犬ということはだれにも分かりはしない」という。ネット上では、あなたがNPO(非営利組織)の一員なのかは分からない。信頼する人に同調することも必要だ。

 ファーバー 現在は劇的な変化が起きている時代だ。政府は既得権力を失わないよう変化に抵抗していく。政府の動きを注意深く見ていく必要がある。

 公文 日本の電話やインターネットのアクセス料金は相対的に高い。速やかに情報化社会に移行するために、アクセス料金は劇的に下げなければいけない。

 佐々木 経験を積めば改良が進む。仮に失敗すればそれを克服して新たな段階に進めばいい。私たちは試行錯誤すればいいのではないか。


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