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アジア分科会

キーノートスピーチ
 ◆「トン・アズマン氏 MIMOS社長兼CEO(マレーシア)」

パネルディスカッション
 ◆「迫られるインフラ構築――アジア太平洋地域の重要性」

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トン・アズマン氏
MIMOS社長兼CEO(マレーシア)
情報中枢、東洋にも・文化の多様性も保障を

 世界情報通信サミットのアジア分科会でマレーシアのトン・アズマンMIMOS社長兼CEO(最高経営責任者)はアジアでのインフラ整備の展望などについて基調講演した。講演要旨は以下の通り。

 科学技術の発展は産業革命をもたらし、西洋の世界を変えた。物質や自然を機械論的観点から分析し、産業革命の成功と生活水準の向上を達成した。テイラーが作り上げた科学的な管理手法が農業、工業や人間社会の管理にまで応用されることで人類は進歩を遂げた。

 インターネットは情報スーパーハイウエーの初期段階にとどまっているが、人間社会に根本的な変化をもたらそうとしている。競争の要素も土地や労働、資本から情報や知識に移り、人間の創造力が重要になってきた。サイバースペース(電脳空間)が真の意味でグローバルなビジネスを生み、国家の枠組みも無意味になってきた。統治や管理の性格、機能が変わり、体制にかかわらず見直しの時期に入った。

 科学的だが階層的な管理手法は、知識を基礎とする情報時代には有害ですらある。機械でなく人間が主役で、階層のない柔軟な管理手法が必要だ。インターネットではすでに新しい統治の実験が始まっている。

 産業革命に後から参加したアジア諸国は工業化のためのインフラ整備が遅れた分、既得権や既存の規制が少ない。西洋とは異なり、階層的ではない柔軟な考え方もある。情報化のためのインフラ整備を推進し、知識社会を構築していくには、西洋に比べて有利な立場にあるといえるだろう。

 西洋が情報技術の先駆者であるのは当然。だが、アジアも提供すべきものを持っている。マレーシアでは2020年に向け知識社会の構築を目指すプロジェクトをスタートさせている。サイバー法で多国籍企業に経済的インセンティブを与え、知識と情報の自由な流れも保障する情報化計画「マルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)」も推進中だ。参加企業が学び合う環境を提供し、答えを見つけようとしている。

 情報のハブ(中枢)を目指して、アジアのマルチメディアコンテンツ(情報の内容)も作らなければならない。だが、文化の多様性も保障することが必要だ。アジアと西洋は対立するものではない。アジアの特性を生かして、平等な立場で西洋と協力すれば、グローバルな未来を作ることができる。

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「迫られるインフラ構築――アジア太平洋地域の重要性」

 
<パネリスト>
トン・アズマン
MIMOS社長兼CEO(マレーシア)
リョン・ケンタイ
シンガポール政府通信局長官
トン・ショウポン
中華人民共和国国務院発展研究センター局長
エレン・マンゾー=イル
AT&Tアジア/パシフィックグループ ワールドソース・ディストリビューション リージョナル・ディレクター
ジョン・スティール
ブリティッシュ・テレコム(BT)グループ・パーソネル・ディレクター
池田 茂
日本電信電話常務取締役マルチメディア推進本部長

(司会)会津 泉
アジアネットワーク研究所代表

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戦略的に人材育成

 世界情報通信サミットのアジア分科会では、アジア太平洋地域の経済発展のためには情報通信インフラ構築が急務という意見が相次いだ。パネル討論の要旨は以下の通り。(敬称略)

 会津 アジアではマレーシアをはじめ各国政府が強い主導権を持ち、戦略的に情報化に取り組んでいる。情報通信技術の育成が次世代経済発展のカギを握るとみられているが、現状はどうか。

 リョン シンガポールでは昨年6月に発表したシンガポール・ワン計画で民間企業のネット構築やアプリケーション開発を奨励しており、ビデオ・オン・デマンドや電子ショッピングができる家庭が5000世帯以上ある。今後の発展のためにはアジア各国が連携し、技術をオープンにして取り組む必要がある。

 インターネット活用にはインフラ整備やコンテンツの充実も必要。現在、コンテンツは大半が米国からの輸入で、アジア地域のプロバイダー(接続業者)のコスト負担が非常に大きい。ネットワークが統合されていないため、アジア域内での料金は米国経由の料金よりも高いのが現状だ。

 トン 中国は工業化の途上で、国家計画として工業、農業、防衛、社会生活での情報技術を応用できるようインフラ整備に取り組んでいる。中国は古い電話網が整備されていなかっただけに、むしろデジタル交換機の普及は早かった。光ケーブルの増設などインフラ整備を進めており、インターネットユーザーも増えつつある。今後は市場競争メカニズムの導入、より安い値段でサービスを提供する体制づくりなどが課題だ。

 会津 政府側ではなく、民間の電気通信事業者としての課題は何か。

 マンゾー=イル 電気通信の発展はあらゆる国、地域で恩恵をもたらす。特に電話通信密度とGDP(国内総生産)の成長との間には高い相関関係がある。

 我々の顧客の多くが多国籍企業であり、アジア地域でも回線提供などのインフラ整備、技術革新に取り組んでいる。現地企業とのパートナーシップで顧客に対して世界中で継ぎ目のないサービスを提供できるよう努めているが、課題は完全な規制緩和だ。

 スティール 一層の発展のためには持続的な競争原理の導入が重要。独立系で十分な財源と権限を持った規制機関を設置し、透明性が高くシンプルなプロセスで新規参入を促すことで、多くの人が価格やサービス面でメリットを受けられるようになる。我々は電気通信は貿易の神経系統だと認識しており、ネットワークの相互接続価格や条件、技術革新、サービスの質を高めることが課題だと考えている。

 池田 NTTはISDN(総合デジタル通信網)のノウハウをアジア各国のインフラ整備に使っており、さらにはマルチメディアサービスなど、より付加価値の高いサービス提供に各国と共同で取り組んでいる。現在アジアは経済混乱に見舞われており、日本を含むアジア全体が共同で取り組んでいくべきだ。

 会津 NTTの場合、事業の国際化とマルチメディア・情報通信事業への展開という二重の変身を同時に進めることになるが、社員の意識の変化も必要ではないか。

 池田 マルチメディア社会のグローバルビジネスは、実際まだどこの会社も経験したことがない。我々が経験不足な部分はすでに経験済みの会社や人から学べばよく、マルチメディア事業の展開は自信を持って進めている。

 会津 アジア各国は情報インフラの確立においては後発の利を得た側面があるが、人材育成、情報リテラシー(利用能力)についてはどうだろうか。

 アズマン 人材育成は重要な課題だ。情報インフラというのは単にケーブルや交換機だけではなく、インフラを動かすための要素、つまりサイバー社会における法体系の確立やセキュリティーも含めた「インフォストラクチャー」(情報体系)としてとらえる必要がある。その意味では当然、人材、アプリケーションも含まれており、それがなくてはハードの部分のインフラも価値はない。

 スティール 人材戦略は企業にとっても非常に重要で、マルチメディアのソフトウエア開発、技術開発ができる人材を確保しなくてはいけない。ブリティッシュ・テレコム(BT)としても新卒採用のほか現地企業とのパートナーシップを通じて優れた人材を確保し、顧客ニーズを満たす努力をしている。

 会津 確かにマルチメディア時代の到来でコンテンツ、創造力の重要度が増している。

 池田 NTTもすべてにおいて顧客のニーズにどう対応するか、ということから考えたい。社会が大きく変化するなか、ニーズの変化にメディアとしてどう対応できるかだ。

 リョン 供給側の人材育成よりも、もっと難しいのは需要側の教育ではないか。つまり多様なマルチメディアサービスの中からある一つを選ぶにしても、消費者の教育、需要喚起が必要になる。シンガポールでもコンピューター化は随分進んでいるが、消費者が使い方、技術を完全に習得するには時間がかかる。

 会津 アジアの文化と情報化についても考えてみたい。インターネットは分散型のシステムで個人や中小企業が力を持つことになる。中央集中型の社会が多いアジアでは対立が生じないか。

 トン ネットワーク時代になり、どの政府もネットを監督する必要がある。中国政府は93年に国家の情報管理のための機構を作り、科学者やエンジニアが作ったソフト、ハードで国の安全のために効率的な仕組みを構築してきた。情報の出入り口はネットワーク管理センターに通じているが、大量で高速の情報の完全な管理は非常に難しい。

 マンゾー=イル 米企業が中国やシンガポールでビジネスを展開しようとした場合、規制に絡んで対立が起こりうる。我々はそうした顧客企業がよりよいサービスを受けられるよう、アジア太平洋地域でも現地パートナーから知恵、力を得て、企業と国家の長期的な関係作りをしている。規制された環境において各国当局に働きかけ、影響力を行使することもある。各国政府も多国籍企業が高い経済価値を生み出すことを認識しており、歩み寄ってきているのではないか。

 会津 情報インフラの活用にはエンジニアが必要であり、アジアでは言語の問題も挙げられる。

 アズマン マレーシアでは英語教育を必ず受けるため、情報通信技術を学ぶにはいい環境にある。政府も教育の重要性を認識しており、MSCの応用としてマルチメディア教育のハブとして使う構想もある。学生も多くが科学技術分野専攻で将来的にはエンジニアも充実するだろう。

 会津 会場から「マルチメディアサービスの受け手側が、情報の渦のなかで混乱をきたさないか」という質問があった。

 トン 確かに文化の衝突や不完全情報、虚偽情報が混在する可能性がある。ネットの世界はある1つの民族が統治できるものではない。米国には米国の基準がある一方、東洋ならではの価値観、良さもある。アジアの政府、企業が力を合わせて取り組んで行かなくてはいけない問題だ。


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