「電子商取引が切り開くネットワーク経済」・セッション2
- <パネリスト>
- 吹野 博志
- デルコンピュータ代表取締役会長
- 松本 孝利
- 日本シスコシステムズ代表取締役会長
- 松香 茂道
- 日立製作所専務取締役
- ストラットン・スクラボス
- 米ベリサイン社長兼最高経営責任者
- 森 正勝
- アンダーセン コンサルティング日本代表
- (司会)関口 和一
- 日本経済新聞社編集局産業部編集委員
政府の役割は
関口 政府は具体的に何を実施すべきなのか。
松香 米国は民間主導、自主規制で行っている。日本の役所でははんこを押さなければならない。セキュリティー、プライバシー、消費者保護、知的所有権などの問題もある。
関口 日本人は米国人に比べプライバシーに関して敏感でないと言われる。半面、自分の台所は見せたくないという一面もある。プライバシーの保護はどうあるべきか。
吹野 逆にインターネットによってプライバシーが保たれている面もある。例えば紙の手紙であれば母親が子供に来た手紙を開けて読んだりすることがある。インターネットならパスワードがないとそういうことはできない。
関口 自分の情報をある程度出さないと、個人向けのECサービスは築けない。その辺の折り合いはどこでつけたらいいのか。
吹野 我々が持っている個人情報は一切外に出さないし、金を払って外からも買っていない。何100年もの歴史の過程で生まれてきた社会慣行やモラルの中で、数年間のうちに新しい仕組みをつくるのは難しい。
松本 ネット上で買った物が届かなかったので会社を探したらなかったというのが1番怖い。ネット上の会社の審査が必要だ。
吹野 先日、米国の契約書にサインするため本人確認が必要で、川崎市まで往復するのに、50分かかって2万5000円払った。米国では秘書が専門の資格を持っていたから、短時間、しかも無料でできた。
松香 ただ、米国の認証制度は民間の中で100年という長い時間をかけて育ってきた歴史があるが日本にはそういうバックグラウンドがない。官も加わって最低限のルールを決めた方が早くできるのではないか。
森 国はモノという概念から離れるべきだ。文部省がコンピューターには金を出してもコンテンツ(情報の内容)やソフトには出さないというのは無意味だ。政府もソフト、コンテンツの重要性を認識し、その観点から公共投資を行うべきだ。
スクラボス 皆さんは独自のプライバシーとセキュリティーの定義を持っている。問題はデータ保護ではなくて企業がデータを利用する際に責任を負うようにすることだ。情報を提供すること自体を制限するのは不可能で、罰則を設けることが必要だ。
関口 これからの企業はどう攻めていくべきか。
森 現時点でEC、特に消費者向けビジネスは非常に少ない。だが既存の物流や組織を意識すると後手に回る可能性がある。インターネットが自社のビジネスに与える影響をしっかり分析し、戦略を立てて会社を変えていくことが大事だ。
関口 最後に、日本でECを立ち上げるには何をすべきか、皆さんからご提言をいただきたい。
スクラボス 個々の会社がECについて独自戦略を打ち立てなければいけない。政府の支配あるいは米国で起こっていることに支配されるべきではない。リーダーになることを恐れるべきではない。
松香 一番大事なのはいかに今のシステムより安全で安いシステムを提供するかだ。これが解決できるのは2、3年先だと思うが、安いシステムが消費者の最大の関心事だから、実現に向け努力するしかない。
松本 パソコンを一番買っている世代は20、30代だ。彼らがよく買い物に行くコンビニは単に雑貨を売るだけでなく、公共料金も払えるしパソコンを売ってもいいはず。この辺の年代のだれかがECで大成功したらみんな勇気をもって入ってくると思う。
吹野 インターネットの普及を市場原理と国家のどちらにゆだねるべきか見極めが必要だ。昨年、クリントン米大統領が来日した際、「21世紀の米国を背負うのは子供だ」と演説した。そして画像を含む大量のデータが自由に、安く行き来できるインフラを築く必要性を強調した。インターネットを速く、安く使えるようにすることが最も重要だが、市場原理だけに任せておけば時間がかかるから、国家がリーダーシップをとらなければいけない。
森 従来の仕組みやプロセスを変えることに勇気を持って取り組むべきだ。これからは商品技術の競争と相まってプロセスの競争になる。組織の面から今の企業体を見直すことが大事だ。
関口 私はビル・ゲイツ会長に「日本政府、大企業は何をしたらいいのか」と尋ねたところ、「それは4つある」と答えた。第1は教育分野へのIT(情報技術)投資をしっかり実施しないと21世紀に日本は競争力を保てないということだ。2番目はIT投資が進むような様々な規制緩和であり、3番目は政府自身の電子化。4番目は優遇税制の実施。スウェーデン政府がパソコンないしIT投資に対する優遇税制を実施したところ、家庭へのパソコン普及率は一気に50%となり、米国と同じかそれ以上になった。日本にもこうした施策が必要だと痛感した。
前ページへ戻る
|