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「電子商取引が切り開くネットワーク経済」・セッション2

<パネリスト>
吹野 博志
デルコンピュータ代表取締役会長
松本 孝利
日本シスコシステムズ代表取締役会長
松香 茂道
日立製作所専務取締役
ストラットン・スクラボス
米ベリサイン社長兼最高経営責任者
森 正勝
アンダーセン コンサルティング日本代表

(司会)関口 和一
日本経済新聞社編集局産業部編集委員

勢力図変動も

 吹野 ECの発展について、私はある程度楽観している。先ほども言ったように、企業・消費者間のEC、いわゆる「BtoC」に対しては、消費者は準備できている。実際に様々な業界において、非常に革新的なトップダウン型の意思決定をし、行動できる企業がECの分野を狙っている。

 どの業界にも既存の業界秩序、ルールを覆す企業があるが、彼らがインターネットを武器にすると、まさに織田信長が火縄銃を持ったように必ず勝つ。あと数カ月もすれば、どんどん出てくるだろう。

 デルは米国で、あらゆるメーカーのパソコンや周辺機器を販売するサイト「ギガバイズ・ドット・コム」を開設した。そこに行けばコンピューターに関する本やソフト、レーザープリンターもデジタルカメラも買える。同じことを日本でやったら既存の流通チャネルを猛烈に刺激するが、消費者はすぐにそっちに行くだろう。

  メーカーがそれでためらっていたら、小売業が始めてしまう。

 吹野 そうなると、エンドユーザーである消費者に近い方がリーダーシップを握って、メーカーが下請けになってしまう可能性すらある。

 松香 先ほどスクラボスさんからなぜ日本は世界標準を使わないのか、という話があったが、例えば(インターネット向けの国際的な電子決済手順である)「SET」にしても、最初はそのまま使おうという議論はあった。しかし、金融機関をはじめ、日本固有の商取引に対応できるソフトを搭載しないと使えないという意見が相次いだ。

 考えてみると、今まで権益を持っている人たちのエゴイズムだ。企業もある程度大きくなると、長い間かけて育ててきたものを新しいものから守ろうとする。やはりECの発展を加速するには、大企業は別会社をつくるのが一番の解決策なのだろう。

 関口 米国でも日本と同じように既存勢力とのコンフリクトが生じたと思うが、折り合いはどうつけているのだろうか。

 スクラボス こうした対立は市場によっておのずと解消されていくと思う。例えばアマゾン・ドット・コムは目覚ましい躍進を遂げたが、例えば競合相手であるウォルマートやバーンズ・アンド・ノーブルにも非常に賢く、才能のある人たちがいる。彼らがアマゾンと真っ向から対抗しようとすれば資本力を生かして勝つ可能性は十分にある。日本の大企業は短期間にビジネスを変えるのが怖いのでちゅうちょしている。

 吹野 実は先日、私のところにアマゾンがドラッグストアを始めるというメールが届いた。書籍販売で得たこれまでの顧客をドラッグストアに囲い込んでいくということだ。インターネットはうまく使えば、ものすごいビジネスになる。

  確かにECの分野では顧客情報が非常に重要になる。もし小売業が顧客情報を全部つかんだら、メーカーは価格競争にどんどん押されていく。だれが顧客情報をつかむかという競争と同時に、小売業とメーカーとの協調体制も生まれるだろう。

 スクラボス 皆さん基本的な意見は一致していると思うが、顧客に最高の商品、価格、サービスを提供できる会社がどんな場合にも勝者になる。これは過去100年の間に実証されてきたことだ。インターネットによって、顧客へのアクセス手段という垣根が撤廃されたのだ。

 松本 本当にその通りだ。先日、ある大手薬品メーカーの幹部にお会いしたら、ネットを活用した新規参入に対する危機感は10分あるが、小売店をつぶすことになるから自らはできないと話していた。日本は意外と簡単に新しい流通システム、新しい戦略を受け入れる。だれもやらないだけだ。

 日本でもネット上に電子モールをつくりモノを売っているが、つまらないので買う気にならない。成功の秘けつは価格だけではない。ECではコンテンツ(情報の内容)をどうつくるかも非常に重要なテーマになると思う。

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