「電子商取引が切り開くネットワーク経済」・セッション2
- <パネリスト>
- 吹野 博志
- デルコンピュータ代表取締役会長
- 松本 孝利
- 日本シスコシステムズ代表取締役会長
- 松香 茂道
- 日立製作所専務取締役
- ストラットン・スクラボス
- 米ベリサイン社長兼最高経営責任者
- 森 正勝
- アンダーセン コンサルティング日本代表
- (司会)関口 和一
- 日本経済新聞社編集局産業部編集委員
普及阻む壁<
関口 IT、ECがいかに重要であるかという点で意見は一致している。日本でECを発展させる上で何が阻害要因になっているのか。具体的に考えていきたい。
松香 ECによって業務革新を図ろうとすると、企業内でいろいろと解決すべき問題が生じてくる。例えば当社の「TWX―21」も当初計画から比べると、会員企業が少ない。企業は自分たちの仕事をECに合わせるべきか、あるいはECを導入した結果、浮いた人員をどう処遇するのか、などの雇用問題を解決しなければならないからだ。そこでためらいが生じるのではないか。そこには日本固有の問題がある。
政府、官公庁の取り組み方にも課題が残るだろう。一言でECといってもネットそのものは郵政省、税金問題は大蔵省、認証問題は法務省など権限が分散し、日本の事情を取り入れながら世界のオープン化に合わせていくのに時間がかかり過ぎてしまう。
松本 米国と比較すると規制の問題は大きい。例えば日本でアマゾン・ドット・コムと同じことをやろうとしても、既存の出版流通は簡単には変わらないだろう。規制をいかに早く取り払うかは非常に大きな問題だ。ECが広がらない理由を考えると、ベンチャー企業が日本で育たないのと同じ原因に行き着く。
アマゾンもそうだが、米国では必ず新しいアイデアを持ったベンチャーがスタートし、その成功を見て大企業が参入するという構図がある。日本は株式市場がまだオープンではないため資金調達が難しいし、税金も高いなど、何かに挑戦しようという意欲をわき起こす環境がない。そこがどうもひっかかる。
吹野 私も松本さんの意見には賛成だが、1つ言えるのは、日本の消費者はECの新しい仕組みを受け入れる準備が十分にできているということだ。デルは世界40カ国にパソコンを販売するサイトを持っており、各国の消費者市場の規模を比べると面白い数字が出てくる。もちろん絶対値では米国が1番だが、全体の売り上げに対するオンライン比率はデルの日本法人がナンバーワンだ。
日本では97年にオンライン販売を開始したが、反響はものすごい。日本の消費者に対しては、我々メーカー、供給側がきちんとすれば売れる下地はできている。一方、企業向けのECで日本は40カ国中最低レベル。やはり商習慣や雇用問題が大きな阻害要因なのだろう。
スクラボス 日本は常に革新的な文化、技術を持っており、暗号化やデジタル署名、通信技術のプロトコルについても先進的だった。だが、インターネットはグローバルな世界だという認識が足りない。インターネットの世界では最高の技術を持つ企業が必ずしも勝者になるとは限らない。標準化された技術や、相互運用性を実現した技術、だれもが使える技術を開発した企業が勝者になる。米国では標準規格が推進力となってECの普及を加速している。
日本は自国に完ぺきに適合したシステムを取り入れようとしている。政策、インフラの両面で日本は孤立しており、それが日本でECが発展しない最大の理由だろう。
森 インターネット、ECの分野で日本はだいたい4、5年遅れているが、一番大きな阻害要因は個別企業の問題ではないだろうか。
家電を売りたいなら、なぜネット経由で消費者に直接販売しないのか。理由は簡単で既存の流通チャネルとの摩擦が生じるからだ。この摩擦をどう変えるか、変えるリーダーシップがあるか、スピーディーに変えられるか。確立された大企業ほど難しい。
松本 シスコの日本法人は既存のチャネルを活用して、うまくECに取り組めたと思う。日本には企業文化という意味で特有の事情がある。しかし、世界の市場が1つになろうとしている現在、企業が21世紀に生き残るにはECに取り組むしか道はない。
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