「電子商取引が切り開くネットワーク経済」・セッション2
- <パネリスト>
- 吹野 博志
- デルコンピュータ代表取締役会長
- 松本 孝利
- 日本シスコシステムズ代表取締役会長
- 松香 茂道
- 日立製作所専務取締役
- ストラットン・スクラボス
- 米ベリサイン社長兼最高経営責任者
- 森 正勝
- アンダーセン コンサルティング日本代表
- (司会)関口 和一
- 日本経済新聞社編集局産業部編集委員
電子商取引、広がる市場
関口(司会) 米国は90年代初めに積極的にIT(情報技術)に投資し、ビジネスモデルを大きく変えて今日の経済的な繁栄を手にした。日本でも今年こそインターネット、ECを本格的に立ち上げる時だ。発展を阻害している要因や政府が果たすべき役割について話し合っていきたい。
吹野 デルコンピュータはコンピューターメーカーではあるが、ユーザーとしても巧みにインターネットを利用してコストを削減、超スピード経営を行っている。昨年度は売上高が2兆2000億円(1ドル=120円換算)に達したが、その約25%の5000億円強がインターネット経由の受注だ。
急成長のポイントは、モノをつくる生産者と、それを使うエンドユーザーである消費者を直結するビジネスモデル。売り買いの部分だけでなく、開発・製造・販売、テクニカルサポートと、ビジネスサイクルすべてを消費者と直結したものにしている。
インターネットをすべてのビジネスプロセスのなかで使うことは、モノをつくる側の利点だけではなく、エンドユーザーにとっても都合がいい。そういう企業が伸びていくだろう。
松本 インターネットは確かに21世紀における産業革命を引き起こしている。シスコは設立からまだ15年だが、ネットワーク機器・ソフトウエアで世界ナンバーワンの地位を確立した。
インターネットコマースでは世界的なリーダーで、年間受注額の7割、つまりおよそ80億ドルがネット経由。98年時点では世界のEC全体の2割をシスコ1社で占めたことになる。ECによって年間5億ドルもの経費削減を実現している。我々は年率68%のペースで情報システムへの投資を増やしてきた。ITを最大限活用し、企業の競争力維持に成功している例と言える。
松香 ECがもたらす可能性、最大の魅力は、新しい市場の創造とECの適用による業務革新だ。日立もネットワークを利用したメディアサービスやICカードのモジュール化など、日本発のEC拡大に取り組んできた。
企業間のメディアサービス「TWX―21」では、日立のネットワークを通じて企業同士が見積もりや売買、図面などを交換しており、会員企業数は1000社を超えている。
しかし、実際問題として日本には日本特有の商習慣や文化、雇用に対する考え方があり、それが急速なEC発展の妨げになっているのではないだろうか。
スクラボス ベリサインはインターネットによって急成長してきた。企業や消費者がネット上で信頼のおける形で取引できるには、電子認証が必要になると95年に設立した。現在ネット上の主要な市場で90%のシェアを持つ。
多くの日本企業は日本で開発された独自の暗号化技術、デジタル証明書を導入したいと考えているようだが、ネット上のグローバルな標準とは相いれない。ECは21世紀に向け、これまで世界が経験したこともないほどの大きなビジネスチャンスをもたらすものだ。日本は民間部門にしても政府にしても、ECがうまく機能するための法整備に時間をかけすぎる。
森 アンダーセン・コンサルティングは伝統的にITを使って金融の仕事のやり方を変えてきた。最近では、自動車にしてもビールにしてもあらゆる業界において勝者と敗者が明確になってきた。
共通した課題はどれだけ会社を変えているか、だ。デルやシスコのように世の中の動きよりも早く変化すると勝者になれる。どんな業種であれ、いまの段階でインターネット、あるいはECについて全く戦略がない企業は時代遅れ。時間や距離の概念を取り払うITを活用し、経営戦略を見直すことが重要だ。
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