「ネットワーク経済と情報通信インフラ」・セッション1
- <パネリスト>
- 立川 敬二
- NTT移動通信網代表取締役社長
- ビル・シュレーダー
- 米PSINet会長兼最高経営責任者
- リー・ダニエルズ
- タイタス・コミュニケーションズ代表取締役社長兼最高経営責任者
- 佐藤 英丸
- AOLジャパン代表取締役社長
- (司会)中村 伊知哉
- MITメディアラボ客員教授
料金体系どうなる
中村 米国の通信料金は、使いっぱなしの電話料金があったりして安いと言われるが、米国でなぜそのようなことが実現しているのか。
シュレーダー まず、規制緩和が出発点になる。競争を導入すれば価格は引き下げられる。米国ではこの15年間、電話市場においてまず規制緩和が行われ、そしてローカルな市内電話では定額料金制度が導入された。価格設定要素、価格を制御するということがインターネットの普及によって変わってきたわけだ。日本でも定額料金が導入されれば消費者は喜んで受け入れるだろう。しかしNTTが独占体制をとっている限り、定額料金が導入される可能性はほとんどない。
佐藤 お客様はみんな同じだと思うが、毎月毎月の払いが高くなるので定額制にしてくれという要望は非常に多い。我々サービスプロバイダーとしては、今後は定額制でやっていきたいし、お客様もその方を喜ぶ。しかし電話料金が従来通り高いのであればビジネスとしては成り立たない。我々は、オリジナルコンテンツをしっかり提供して、なおかつブラッシュアップしていくサービスが必要だと考えている。
しかし接続プロバイダーの方が定額制で、電話代は従量制というのでは非常に難しい。バックに電話のフラットレートがあってはじめてプロバイダーの定額も成り立つと思っている。現時点で日本で定額制を実現するのは非常に難しいのではないか。
ダニエルズ 競争が導入されれば創造性もより豊かになり高速データサービスの価格も下がってくると思う。
立川 利用者にすればフラットレートがいい。電話で考えると日本も昔は定額制で、これを従量制にしたのは使用頻度によって料金が違わないのは不公平だという意見が多かったからだ。インターネットが入ってきたから従来とは違うというのであればいかようにでもできると考えている。
シュレーダー 定額制を導入すれば競争が生まれるのか、あるいは毎分ごとの従量制にすべきなのか――。こうした問題は政府が決めるのではなく、むしろライバル企業間で決めるべき話だ。お客が選んだところが勝者になる。そこでもし料金体系が違えば、お客にメリットの大きいほうが魅力的となる。
佐藤 1カ月いくらの定額制であれば、ユーザーとしては使い勝手がよいし、利用頻度が高くなる。それは確かだ。
ただし一気に定額制に移行させるより、ライバル間でサービス価格競争が起こり、その結果、サービス価格が下がっていくのが望ましい。実際、米国では価格競争が頻繁に起こっているが、最終的にはユーザーのメリットになる。我々プロバイダーにはたくさんの競合他社がいて、お客は選ぶ立場にある。ところが電話には選ぶ余地がない。本音を言えば、電話代を徴収している会社もお客に選択された方が公平ではないかと思う。
中村 日本では具体的にどんなネットワーク、インフラを構築していくべきか。
ダニエルズ 米国ではデジタル衛星放送が急速に普及している。歴史的にみればCATV(有線テレビ)会社に競争相手がいなかったのが、突如として新技術が誕生し、非常に速いスピードで社会に普及した。放送と電話の機能が重なるようになったり、データ通信と放送分野が重複し始めたりして、既存の区別が通じなくなり、業種の垣根もぼやけている。そうなるとお互いに競争し合うようになり、その競争の中から新しい技術が開発されていく。
立川 通信会社の立場から言えば、ネットワークはどんどん発展していくと思う。将来、銅線ケーブルは光ファイバーに変わるだろう。日本では2010年までに光ファイバー化しようと動いている。どの程度のスピードで進めるかは、需要に応じて決めるべきだ。
米国の銅線ケーブルは直接地下に埋める形で配線している場合が多いので、これを光ファイバーに変換するには多大なコストがかかる。このため当座は銅線を使い、光ファイバー網の建設は少し後回しにしようという発想だ。一方、日本は電柱に乗っている架空電線が多いため、今後はできるだけ地下に敷設したほうがいい。その際、光ファイバーを利用したらどうか、という発想だ。
シュレーダー 市場競争で何が必要なのかが決まり、それに応じて供給者が回答する。例えばDSL(銅線を利用した一般電話回線によるデジタル伝送方式)はどうやって開発されたか。電話ではなく、コンピューターの技術革新だ。
立川 私の考えは逆だ。日本の方が光ファイバー化など技術開発を積極的に進めていると思う。現在、米国では大手地域電話会社のベルサウスが光ファイバー化に取り組もうとしているくらいで、他社は関心が薄いようだ。当面の投資を避けた方が得策という発想で、利益追求を考え過ぎるがゆえに技術革新を上手に活用できないのではないかと思う。
シュレーダー ベルサウスのケースは興味深い。同社は現在、これまで維持していた独占的な地位が危うくなっている。無線やCATV、衛星など他のサービスが誕生しており、競争が激化しているためだ。
ダニエルズ 長年、その使用に取り組んできたけれども、このレートが人為的にとても高かった。というのもカウンティングレートになると、日本と米国に関しては、最後の接続部分が、とても高かったからだ。だからそこで代替策を求めた。そして日本政府が規制緩和を実施した。その結果、どうなったかを見てほしい。
国際長距離通話料金で見れば、2年前、米国に通話すると、1分当たり約120円だった。今は、AT&T JensだとIP電話で1分当たり約26円。DDI、IDCでは1分当たり約34円になっている。市場における合理化は、必ずしも技術が背景にあったわけではない。要は自由化、競争の導入、消費者の選択によって業界は選ばれるということだ。
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