1年前の世界情報通信サミットでは、いつでもどこでもネットを通じて情報にアクセスできる「ユビキタス」をテーマに討論した。それから1年、米国では情報技術(IT)バブル崩壊が進行、ネットインフラを担当する通信キャリアやIT企業が大きな痛手を被っている。米国のネットベンチャーの倒産件数は、2000年が225件、2001年は8月時点で既に417件に達した。
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しかし昨年、世界のインターネット人口は5億人を超えたという。ネットに対する需要は着実に増えている。日本でも半導体不況は底を打つ気配を見せ、ブロードバンド(高速大容量)人口も順調に伸びているという事実がこれを証明する。国内では2000年12月からの1年間で、携帯電話経由でネット接続した人は2163万人になった。韓国のネット対戦ゲーム、ネットカフェ人気を下地とするADSL(非対称デジタル加入者線)の加入増加とあわせ、ネットの普及には若者の参加が重要であることを物語っている。
日本政府が推進する「e―ジャパン構想」では、2005年までに全国4400万世帯のうち4000万世帯がブロードバンド回線を利用できるようにする予定だ。この計画に基づき、ADSL、ケーブル回線接続、デジタル放送など新しい通信サービスの利用者が、いずれも前年比数倍の規模で増加している。
これらの現象は通信サービスの価格低下とあわせて、広帯域通信のインフラに対する国民的な関心が高まっていることを示している。今年登場するネット対応の新しいゲーム機も、若者を中心に広帯域通信への需要を刺激することになるだろう。
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インターネット、無線ネット、第三世代携帯電話、地上波デジタル放送など異なる規格のサービスをシームレスに結ぼうという計画があり、利用実験も進んでいる。この中から屋内、屋外どこでもつながるユビキタスな環境のもとで、デジタルコンテンツ(情報の内容)の配信、認証、課金サービスなど様々なビジネスモデルが出てくると考えられる。新しい融合型端末の開発も促進されるだろう。
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ネットの明るい希望・未来に対し、同時に多くの問題点が存在することも事実だ。今回のサミットではネット上の知的財産権、消費者保護、プライバシー、セキュリティーの問題などを考える。ラブレター、コードレッド、ニムダなど2001年の世界のウイルス被害額は132億ドルに達した。地域でみるとアジアはADSLが最も普及した韓国の被害が日本などを覆ってしまうほど大きい。
インターネット、ブロードバンドの普及でもたらされるネット社会は我々に大きな希望を与えるものだが、あくまでセキュアなネットワーク構築が前提となることは言うまでもない。そのためには安全な通信インフラづくり、法制度整備、技術革新が必要だ。こうした状況下でセキュアなネットワーク社会の形成を考えるのは、いままさに時宜を得たものと言えるだろう。