國領二郎
慶応大学ビジネススクール教授
ビジネスの基本を大切にしてネットの秘める大いなる可能性を着実に引き出そうというのが最大のメッセージだったように思う。この1年間、株式市場で理性を失ったような熱狂があり、その中で経営の基本を無視した経営もあった。しかしネットの真価はそんな浮ついた流れとは無縁だ。
「大切なのは顧客に価値を提供することだ。それができれば収益をあげる方法は必ず見つかる」という発言が共感を呼んでいた。BtoBでは使うことで顧客側のコストが下がったり、ビジネスチャンスを広げたりする商品やサービスを提供する。BtoCでは顧客が思わず財布を開きたくなる魅力的な商品を提供する。
ネットビジネスの不安定さの一因は情報財の限界費用がゼロに近いこと(つまり理論的には価格ゼロとなる)にある。悲観的な見方をすると情報ではどんなに大きな価値を生んでもお金にならない。海賊版音楽流通で裁判となったナップスター問題などはその象徴だ。しかしこれは解決できない対立ではない。既存の制度に固執せず、定額(使い放題)会費モデルなど情報創造を行う人間への報酬を保証しつつ情報を共有するメリットを生かすビジネスモデルの開発こそ重要であるという論点が繰り返し出された。
歴史的に培われた経営管理手法やビジネスモデルの中にも学ぶものが多く、新産業の中にその知恵をどのように取り組むかという議論がなされている中にネットビジネスが幼年期から青年期に入ってきたことを感じた。
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