世界情報通信サミット2001
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独占排し競争導入を
ウィリアム・ケナード ウィリアム・ケナード
米アスペン研究所シニアフェロー、前米連邦通信委員会(FCC)委員長
 米連邦通信委員会(FCC)の委員長としてこれまで世界各地を巡るチャンスに恵まれ、情報通信分野の政策に携わる多くの人々に接することができた。そこで実感したのが、自由化がもたらす利益を各国の政策立案者が強く認識していることだ。特に先進国の多くは競争を促進するために市場を開放し新規参入を認めている。

 各国の政治家はITの成功には時間が重要なキーワードになることを理解し始めており、自由化をスピーディーに推進した結果、医療や教育など様々な分野でよりよい市民サービスが生まれるようになった。

◇ ◆ ◇

 米国では1996年に通信法が改正され、これが通信事業での独占体制の終焉(しゅうえん)をもたらした。競争原理が導入されたことで通信市場は爆発的に成長し、投資と技術革新が加速。インターネットなどナローバンド(狭帯域)レベルでの普及が急速に進んだ。一方、ブロードバンド(広帯域)はまだ努力が必要と言える。

 そこでFCCの前委員長として学んだ五つの教訓を紹介したい。ブロードバンドネットワークを普及させるための参考になるはずだ。まず第一に独占体制の魅力に気を付けることだ。80年代に米国政府が下したいくつかの判断がよい例で、これらが現在のインターネット革命をもたらしたと言える。

 その一つがAT&Tの分割で、痛みも大きかったが情報通信分野における競争原理の基盤となった。インターネットを従来型の電話サービスとして規制すべきではないと決めたことも重要だった。様々なアプリケーション提供者が参入できるようになり、爆発的な競争が生まれることでイノベーションをもたらした。

 もちろん既存の大手電気通信事業者は「ユニバーサルアクセスのサービスを市民から奪うことになる」として開放政策に反対した。しかしこれは事実ではない。競争モデルを導入すれば新技術の普及にもつながる。

 政府は真に独立した規制当局を設け、閉鎖的な市場を開放する必要がある。市場開放は最も苦労する仕事だが、政府は勇気を持って現状を変えねばならない。

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 第二の教訓が既存大手と新規参入者が同じ土俵に立って競争するのが当然であるという神話を疑うことだ。FCC時代にも「せめて対等の土俵に立てるよう規制緩和してほしい」という要請を多くの事業者から受けた。しかし、これは言い換えれば「自分たちの規制を緩めて競合相手をもっと締め付けてくれ」ということと同じだ。100年以上も業界にいる企業とスタートしたばかりの企業が平等に競争できるはずがない。

 三つ目の教訓は「規制資本主義」を放棄すべきだという点だ。ポリティカルエコノミーに依存する企業は工場や新たなサービスに投資することはない。規制資本主義では歴史の長い大企業が大きなメリットを受けるだけでしかない。

 「ユニバーサルサービスは慈善事業ではない」という点が第四の教訓だ。ユニバーサルサービスというと、福祉や慈善事業であると考える人は多いが、私は「チャリティー(慈善)」ではなく、競争によって新規参入者が生まれる「チャンス」であると考える。例えばワイヤレス市場などはその典型と言えるのではないか。新規参入者が生まれることで今まで無視されてきた地域でもサービスの開始が考えられるはずだ。

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 ただ注意すべきなのは、新規参入があったとしても、人口や地理的条件などによってサービスが受けられない地域が存在し続けるという事実も認めなければならないことだ。まさにデジタルデバイド(情報化が生む経済格差)の問題であり、これを解決することが今後のテーマになることも確かだ。

 例えば私がFCCの委員長時代に推進した学校のネット接続環境の整備はデバイドの解消につながるし、日本が巨額の資金を使って発展途上国にエンジニアを派遣してデジタルデバイド解消の橋渡し役になることは大変すばらしいことと言える。こうした取り組みを通じて本当の意味での「ワールド・ワイド・ウェブ」を実現することができるのではないか。

 最後の五つ目の教訓は「将来を受け入れることが重要である」という点だ。今、通信の世界では回線からパケットによるネットワークに移行しつつある。これは最近の会計や決済システムの進化にも適応する。

 IP(インターネットプロトコル)電話は、個人間で大量のデータをやり取りする「ピアtoピア」を音声レベルでも実現できるようになる便利な代物だ。IP電話を使えば低コストで電話がかけられるという認識が世界中の消費者の間で広がり始めている。

 一方でこうしたIPテレフォニーがいまだに犯罪行為と見なされる国も残っているのも事実だ。我々は変化を恐れるべきではない、変化を恐れることは確実に将来の打撃になる。

 世界経済は混乱の度合いを深めつつあるが、ITセクターはそのうちに安定するものと考えている。それは、ITセクターはビジネスモデルとして存在意義があるためだ。  ユビキタスを広めるためには、今後もどのような国家横断的な戦術が必要なのか議論が必要だろう。

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